K(アニメ)二次本文

□好き嫌い
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この男が完璧でないことは初めから知っている。
けれど、こんな考え方で桜を嫌って、しかもそれは人づきあいをことごとく断る理由にすらなるほどの嫌悪感があるということに、伏見は妙に満足していた。

ついでに、弁財はそれなりに話してくれたので、多少は自分のことも話してみることにした。

「俺は…好きですよ」

今度は、弁財が驚く番だった。
伏見から、そんな言葉が出るとは思っていなかった。

情緒を解さないとは思っていないが、興味はないだろう、と無意識のうちに思っていたのだろう。
どうにも弁財には、それが伏見の口から出るには違う言葉に感じた。

「なぜ……ですか」

理由は分からないが、今はそれを尋ねるべきではないか、と弁財は不意に思ってしまった。
流しても問題はないだろうけれど、伏見を置いていくことになるような。

「バカバカしくて、安心する」

答えを言うとともに、うっすらと笑みを貼りつけた伏見の目は冷たかった。

「ああ、もちろん、群がってるヤツらは嫌いですけど」

「…ええ」

でしょうね。

そこは通常運転だった。
人ごみを見ると不快そうな表情をするから、それは分かる。

しかし、

「なんで……いや、どこが、ですか」

バカバカしい、とは。

何を指してのことか、弁財には分からなかった。
桜を見に集まる人間を指してのことでもないだろう。
それならばむしろ、嫌い、と一息に切って捨てるはずだ。

そう考えていた弁財に返された解答は、弁財が桜を嫌う理由とよく似ていて、まったく違うものだった。
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