K(アニメ)二次本文

□好き嫌い
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今日は、同室の奴は遅番なのでいない、ということで伏見は終業してから恋人の部屋にころがりこんでいた。
相手がいないのも気にせずに。

伏見がセプター4に来て、特務隊に移動してからしばらくして、何故か、そしていつの間にか近くなっていた男。
非常に扱いにくい上司であろう伏見に、初めは我関せず、といった様子だったというのにどこで心変わりしたのやら。
とは言え、別に弁財は伏見にいやに絡んできたり、甘やかしたりするわけではない。

ただ、そこにいる。

伏見が近づけば、受け入れてくれる。
特に伏見を追いかけてくるわけではないが、その分安心した。
今では、伏見がごく普通にくつろげる、そんな居場所になっていた。

タンマツが震える。
着信音はメール受信時のもので、伏見はメール画面を開いた。
差出人は職場の部下からだったが、文を読んでやれば、仕事の関係ではないとすぐに知れた。
こんなことわざわざメールで送ってくるなよ、と伏見は毒ついたが、別にそのこと自体には嫌な気はしなかった。

ぱたん、と音を立てて扉が開閉したのに気がついて、伏見はいじっていたタンマツから目を上げた。
おそらく、家主だ。

「ただいま」

「おかえりなさい……?」

部屋に入ってきたのはもちろん、伏見が思った通りの人物だったが、思わず首を傾げた。

「どうかしましたか?」

そんな伏見の反応に尋ねる弁財に、伏見は今いじっていたタンマツに表示されるメールを読み返した。

そこには、今日は花見をするからよかったら来てほしい、という内容の文がある。
差出人は日高だったが、どうにも特務隊のメンバーはほとんど参加するらしい。

「今日はあいつら、花見だとか言ってませんでした?」

「ああ。…俺は参加しませんよ」

「そうなんすか」

意外そうに弁財を見つめる視線を、本人は気にせず制服を脱いでいく。
青いコートとベストをさっさとハンガーにかけて、適当に整えてそのままクローゼットの中にしまいこんだ。
シャツとスラックスは一応そそのまま。
その間も、会話は続く。

「花見はあんまり参加しないから、もうみんなも慣れてますしね。室長命令以外は、ほとんど出てませんよ」

「……」

バカ騒ぎはしないし遊びまわるタイプでもないが、いつもは空気を読んで付き合いもそこそこにこなす弁財がそんなことを言ったのに伏見はえ、と目を開いた。

よっぽど意外だったのだろう、と弁財は内心伏見からの自分の評価に苦笑した。
別に弁財は完璧ではないし、むしろ我が強い方ですらある。
もちろん、他のメンバーより落ち着いてはいるが、それでもよくできた大人とは言い難い。

伏見とこうしていられるのは、互いにうるさいことを嫌い、互いの能力を認めている以上に相性の問題が大きい。

別に、弁財は面倒見がいいわけではないし、人づきあいがよい、というほどでもないのだ。

それを知っている伏見だが、やはり意外だったのだろう。
なんでですか、と聞いてくる彼に、クローゼットから離れた弁財は苦笑交じりに理由を話した。
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