K(アニメ)二次本文
□Call me
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はあ、とため息を漏らして草薙はいつも自分が大切にしているカウンターにもたれかかった。
もうしばらくすればてんてこまいになるのだから、今は少し休んでおきたい。
そう考えて休む姿勢に入れば、唐突にズボンのポケットに入れていたタンマツが着信音を鳴らした。
「!」
基本的に、バーの関係者はバーに備え付けの電話にかけてくる。
草薙のタンマツにかけてくるのは個人的な親交がある人間か、もしくは吠舞羅の関係者だ。
だから、大体このタンマツに着信があるのは、なにかの問題があることが多い。
今度はなんや、とタンマツを引きずり出して画面を見ると、自分が声を聞きたい、と思っていた相手の名前が表示されていることに一瞬固まった。
しかし、相手は短気で、それ以上に時間がない。
もし時間がなければ電話もかけてこないだろうが、激務の間を縫っての行動だろう。
一秒でもいいから長く声を聞きたい。
そんな甘ったるいことを考えつつ、草薙はすぐに指を動かして通話にした。
「もしもし……猿?」
「こんにちは」
タンマツのスピーカーから流れてきた音に、草薙は次になんと言おうと考えた。
結局、出てきたのはなんのひねりも面白味もない言葉にすぎなかったけれど。
「今日は時間あるんか?」
そう、八田が絡まないいつもはセプター4のナンバー3にふさわしい力量を見せる伏見だが、だからこそ仕事量は他の人間とは比べ物にならないほど多く煩雑である。
それは仮にも自分の仕事を持ち、また、吠舞羅のナンバー2としての行動もしている草薙には分かり切ったことだ。
そんな伏見は、ある意味かなりの自由がきくバーのマスターである草薙よりも時間を縛られている。
あまり仕事態度はよろしくない伏見だが、仮にも敵対組織のトップ同士であるということはちゃんと認識しているため、ここばかりは公私をきっちり分けている。
仕事中であるどころか休憩中や、帰宅途中であっても職場から電話をかけてくることすらありえない。
まさか、休みでもとれたのか?と思った草薙だが、さすがに現実はそう甘くなかった。