K(アニメ)二次本文

□Call me
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いつものように買い物を済ませ、バーの冷蔵庫やら倉庫やらにきちんと整理して入れる。
それは、仕事の効率化、というより先に草薙の性分のようなものだった。

自分のいる場所が綺麗であれば気分はいいし、見えないところでもしっかりしておくよう心がければ気持ちはすっきりする。それだけの話。

しかし、今日はいつもよりも多く食材が消えるのだろう、と今はまだバーに訪れていない吠舞羅のメンバーを思い出して仕入れは常よりも多めだ。
自分一人ですべてを買ってきたので、少しばかり重く、疲れた、と整理が終わった草薙は息を吐き出した。

「今年はどないな風に祝ってくれんねやろな……」

毎年、十束が率先して騒ぐ。
他のメンバーは以外にも普通のプレゼントだったりして、アンナは……正直なにをくれても嬉しいのだが。
周防もいつも草薙に世話になっていることは自覚しているためか、なんだかんだ祝う。
ただ、毎度のごとく十束のすることは突飛で、なにかが起きる。
祝ってくれること自体は嬉しいのだが……正直、去年のロシアンルーレットまんじゅうはマスタードがつらかった。
むしろそれこそあんこを入れてくれと思った。

そして、吠舞羅のメンバーには誰にも言っていないが、恋人からの祝いの電話もメールも届かない。
もちろん、プレゼントも。

相手は非常に多忙の身であるため、そうなるであろうことは分かっていたが、やはり、寂しいものは寂しい。

ついでに、今半ばバーに居候している周防とアンナ、そしてなんだかんだで入り浸っている十束がいないのは草薙に気を使ってのことだろう。
夜になれば吠舞羅のメンバーでごったがえして、自分の誕生日なのにろくに休めもしないだろうことはこれまでの経験で分かっている。
だからこそ、昼くらいは一人で休んでもらって、そしてできれば恋人と連絡でも取りあってほしい、というところだろう。

アンナはその能力もあってか鋭いところがあるし、十束も目ざとい。
周防はそれこそこのバーに昔から本当の主よりも主(ヌシ)らしいレベルでいるし、まず付き合いは一番長い。
伝わってしまうのも仕方ないことだ。

しかし、その相手は他のメンバーに知られるわけにはいかない。
吠舞羅のメンバーどころか、他人のいる状況で連絡を取り合ったこともない。

なんというか、バーに来てもらうのはマズイ相手なので、たまに自宅に上げて会うのだが相手が忙しいためそれもなかなかできない。
しかし今日は草薙の誕生日。
直接会うのは無理だとしても、せめて声が聞きたい。

「まあ、無理やろけどなー……」

向こうも仕事をしているのだ。
しかも草薙とは違って融通の利かない職についている。
昼の休憩ならば電話をかけてこれた可能性はあるが、いつもどおり忙しかったのだあろう。
一切電話もメールもなく、既に午後の就業時間である。
そして相手は残業や徹夜もよくあることだという。
これは諦めるしかあるまい。
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