K(アニメ)二次本文

□君にとってこの場所が
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自分たちは基本的に、二人でいる時も互いの好きなようにすごす。
これがタイミングの悪い人であればすぐに破綻するのだろうが、自分たちは色々と調子が合っているため特に問題ない。

今日も新刊だという文庫をゆっくりと読んでいれば、タンマツをいじっていた彼が寄りかかってきた。
左肩に重みがかかる。

肩にのった頭に手を置き、さらりとした髪を梳くようになでた。
仕事中と違ってワックスがつけられていない柔らかな髪は、美しい黒色で指にからむことなく流れている。

ふと思いついて一房すくいあげて軽く口づける。
ちゅ、と小さなリップ音をあえて鳴らせば、いつもより下にある目がじろりと睨みつけてきた。
ただ、数時間前までの険のあるものではなく少しばかりの柔らかさと甘さを含んだものだったので機嫌を悪くしてはいないのだと知れる。

それににこりと微笑んで返せば、すぐに視線がそらされた。

初めのうち、さっぱり懐いてくれない猫のようだった彼が初めて自分に気を許してくれたのはいつのことだったろう。

今ではこうやって自然と甘える仕草を見せるが、今のポストに変わってすぐはひどいものだった。
それが、いつの間にか棘が減り、慣れてきたのか対応も大分と穏便になってきている。
プライベートで二人きりになれば甘えてくれるようにもなった。
多分、あとしばらくすればそれも笑い話として語れるようになるはずだ。
同僚で同室の男もお前にはよく懐いたな、と笑っていて、他の者にもこの少年が受け入れられてきていることを知らせてくれた。
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