K(アニメ)二次本文

□本当の気持ちなんて
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美咲、とつぶやいた無防備な表情に、美咲は小さく笑った。

中性的な顔立ちと同じシャンプーを使っているはずなのに美咲より綺麗でさらさらした髪。
不健康ではないかと思えるほど色の白い肌に綺麗な瞳。
いつも自分だけを呼ぶ声。

どんな夢を見ていたのかは知らないが、うなされていた猿比古が助けを求めるように呼んだのが自分の名前だったことに優越感を感じる。

「…ばーか」

こんな無防備でなにかあっても知らねーぞ

多分、普通の友情とは違う。
そんな気持ちを持て余しつつも、猿は友だちだ、と思い込んで認めない。

今、世界でつまらなくないものは猿比古だけだ。
きっと猿比古も同じように思っている。

だから、二人の関係を壊したくはない。
友だちだから。





さらり、と猿比古の頭をなでれば甘えるようにすり寄ってくる。
もしかして起きてる?と初めの頃は思ったものだが、起きているなら意地っ張りで意地悪なこの親友がこんな可愛いことをするわけもない。
手をたたき落とされることはなくてもタイミングが悪ければ機嫌を損ねるだけだろう。
寝ているからこその仕草だと今では分かっている。

ついでに外で、たとえば通学中のバスなんかでうたた寝する時も眉が寄っていて、誰かがすぐ傍に来ただけで起きてしまう。
それはバスで座っているから、とかいうことだけではなくて他の人間がいるからだ。
そして、猿比古が心を許しているのは自分一人。
それに気付いた時、酷い話だがとても嬉しくて安心したのだ、美咲は。

このきれいなものは自分だけのものだ、と。

決してイケメンだとかすばらしい美人だ、とは思わないが綺麗な顔立ちをしている猿比古は安心しきって眠っている時見るとどきりとすることがある。
いつもはどこか険のある不機嫌そうな表情をしていることが多いため意識することはないが、メガネを外して柔らかな表情をしていればコイツホントに男か?などと本人に知れれば殴られそうなことを考えてしまう。

今は自分の胸のあたりに頭があるから表情がうまく見えないが、きっと安心しきった顔で美咲にくっついている。
すでに確信になりはてた推論を思って、美咲は笑った。
どこか歪なそれを。

「・・・猿比古」

すきだ

相手に聞こえない。
相手にその真意を探られない。

このままでいられるように、わざわざ相手の耳をふさいで美咲は猿比古に囁いた。











美咲が、自分の気持ちを認めて伝えなかったことを後悔するまで――――
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