K(アニメ)二次本文

□フルカウント
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 おいしい。

 こくりとのどを鳴らして飲み込んだそれは完璧に好みのもので、無意識のうちに息がもれた。
ほぅ、というそれを聞き取ったからか何なのか、目の前の男はページを繰っていた雑誌から顔を上げてこちらを見――柔らかに笑った。

 ただ柔らかなだけではなく、少し甘いような、そうでないような。
どこか濁ったものもあるのではないかと勘ぐりつつも許してしまえるそんな。

 それはまるで今飲んだばかりのミルクティーのようで、気持ちがぐらりと揺れる。

 文庫本は今からいいところだ。
推理モノだったそれはうまいこと謎と証拠を見せつけてきていて、地の文の雰囲気も合っていた。
これは推理場面もいいのだろうな、と期待できる程度には。

 ミルクティーは好みで、執務中の対応も、ローテーブル越しの距離も、今の部屋を対流する空気も、こうして向けられる笑みも、すべて。

「     」

 目を細めていつくしむ、という言葉がとても似合う視線が語る。
既に告げられた一言を返せばおそらくこの世界は完成するだろう。

 いつか抱いていた、新しい世界に対する恐怖心や不安、猜疑心はもう奪われてしまった。
目の前の男を初めとする今の部下や上司によって取り上げられたまま、返ってこない。

 多分あと一つ。

 何か、秋山があと一つを見つければ、俺は打ち取られるのだろうな、と秋山のついでに目に映った雑誌に載ったワンフレーズにそんなことを考えた。

 今の俺は多分、フルカウント。




※フルカウント
[1] 野球で、打者への投球がツーストライク・スリーボールになった状態。
[2] ボクシングやレスリングで、勝敗を決める規定のカウント数まで数え終わること。

よりぬきお題さん。」さまより 429.フルカウント 使用


*  *  *  *  *

二人のマグカップの色は相手のイメージカラーを互いに持ち合ってもらいました
ちなみに秋山さんが買ってきたのでほぼ確実に故意だという裏設定

優しさに弱い伏見を甘やかして安心させようとしてる特務とそれに絆されつつも気がついている猿比古を書きたいですね

お題をちゃんと消化できたかは正直微妙(笑)←
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