紅い悪魔に恋をする

□揺れる
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階段を1段1段のぼるたび、さっきの光景が思い出されてイライラがつのる

ルキが自分のものではないのはわかっていたが、恋人がいることを見せつけられたようで我慢ならない

すぐにでもイギリスを出てやりたいが、まだやることがある
イギリスでの任務が、まだ終わってないのだ

大人気ない、と思うが、ルキと恋人を引き離すことを考えながら低く笑う

(今日中に片付けてやる)





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ザーザーと、熱いシャワーの水が風呂の床のタイルとぶつかりあう
熱いシャワーを浴びていても、スッキリしない

自分が何もできないこと、
自分の身に起こったこと、
母上が殺されたこと、
父が亡くなっていたこと、
父が亡くなっていたこと、
すべて父上に背負わせてしまっていたこと、
父と母が亡くなったこと
…もうパパとママに会えないこと

すべてがシャワーの水とともに降りかかってくる
散らばっている感情を1つ手に取るでもなく、鏡の中の自分をみつめる


(涙が枯れるほど泣けば、きっと何かが変わってくれる)
(いや、違う。そんなんじゃない。泣けば泣くほど、みじめなだけだ)
(泣こうと思って泣くことは、本当に泣いていると言えるのだろうか)
(涙を抑えれば、みじめではないと言えるのだろうか。いやそれも違う…)


頭の中で、とめどない協議がなされている
やがて、結論に至ったようだ

(楽になりたい)

キュッとシャワーのスイッチをひねり、シャワー室のドアを開ける
爽やかな風を浴びて、おもいっきり息を吸う
冷たい空気が、自分の結論は正しいと言ってくれているみたいだ

(ほら、私は間違ってない)

おばさんが用意してくれた黒色のパジャマに袖を通す

(早く、早く)

服を着ると、髪の毛も乾かさずに早足で自分の部屋に行き荷物を開く

ガサゴソと中をさぐり、細い手が掴んでいたものは

(本当は売ろうと思ってたんだけど…)

白い錠剤がぎっしりと詰まったビン

裏では、ナイトレイド家にない毒はないと言われている
家の人間自らそれを飲むとは皮肉なことだが
そんなことも気にせずに、とめどない快楽の中逝けるものを選んできたルキはほくそ笑んだ
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