紅い悪魔に恋をする

□出逢う
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「おい、立てるか?」
『………』

何も言わずに首を横にふる
(足が埋まってるのよ、見てわからないの?)

そう思いながらジトっと男を見ると、なぜかため息をつかれた

(…むかつく)

「ほら、つかまれ」

男は瓦礫をある程度どけると、ルキの足がまだ少し埋まっているにもかかわらず、片手で無理矢理ひっぱり起こした

『…っぅあ』

痛い、と言おうとしたのに、掠れたような声しか出ない

すると、男ははじめてルキを心配したように覗き込む

「声、出ねえのか?」
『!!』

至近距離で言われ、後ずさろうとしたが男は腕を離してくれない
しかたなく、こくんと頷く

(なによ、そんな目で喋りかけないでよ)

昔から、心配されたり憐れまれたりすることが嫌いだ
というか、慣れないからどうしていいのかわからなくなる

「そうか…とりあえず行くぞ」
『??』

喋れないので、どこへとも聞けない

グイッ
男は、ルキの腕を掴んだまま歩き出す
歩調が合わない上に、足が痛くてもつれてしまう

『!!』

ドンッ

男にぶつかり、その拍子に男の腰に後ろから抱きついてしまう

『っ…///』
バッと離して、ごめんなさいと言おうとしたが喋れない
男は目を細めてルキを見たあと、掴んでいた手を離して歩き出した
ルキも慌ててそのあとを追う

『………』
「……」

(…なによ、無理矢理ひっぱったあなたが悪いんじゃない)

飄々と夜明けの街を歩く男
そのあとを、疲れた表情で歩くボロボロの女
そんな2人に、朝まで店で飲んでいる連中は誰も近付くことはできなかった

(疲れた…どこまで行くのよ)

頭から出た血がかたまりだしてきた
強烈な目眩と戦いながら歩くルキは、男がさっきよりゆっくりと歩いていることに気付いてはいない


カランカランッ

「入れ」

男は一軒の宿屋の扉を開けるとルキを振り返り声をかけた
鉛のように重い頭を抑えながら、男が開けてくれている横を通り中に入る
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