紅い悪魔に恋をする

□かえる
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真っ黒な室内、飛び交う赤や青の光
たくさんの叫び声、楽器の音
あちこちで乱闘が起こり、酒が飛び出し周りをビシャビシャにする

『私を貫いて破ってー』

ギャーギャーうるさくて、自分たちで作ってたわりによくわからない歌を汗だくになって叫ぶ
(今日は喉の調子がいいわ)


メガホン片手に、いろんな色の髪の毛やタトゥーをした客の並にダイブする

『ああ、もう!痛いわよ!!背中に頭突きしないで!』

キーンとうるさいメガホンで叫ぶ
(じゃあダイブなんかするなって話だけど、なんだか女王様みたいでいい気分なの)


…ボサボサ髪で瓶底眼鏡のもっさい男が、ライブハウスの入り口付近でタバコを吸っていた

目が合うと、口だけ上にあげたような笑み

(うわ鳥肌立っちゃったじゃない、こんなに暑いのに
見たらダメ見たらダメ…)

チラッ
(……あれ、いない?帰ったのかしら
ま、どうでもいいわよあんなやつ)







「やっぱりな」

喧騒の外に出て、タバコをふかしながらしばらく歩く
(あー、耳がおかしくなりそう。てかなったわこれ。俺の耳ちゃんと聞こえてる?)


(ジャスデビおすすめのバンドっつーから来てみれば、何だよあれは
ま、おかげでイノセンス発見したし…)



「…発見?」

(ちょっと待て、なんであの双子は気付かなかったんだよ)

いや、というか

「俺に押し付けやがったな」

はー、とため息をついてタバコを捨てる
(しょうがない)
(やつらに乗せられるくらいなら、俺から乗ってやるよ)



「私を貫いて破って〜」
…この曲何だっけ、離れねえ






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ずいぶんと久しぶりのロンドン
馬車の中で揺られながら目を閉じるだけで、自然と昔のことを思い出してる





「おーい、聞いてるの?」
『!』

声がして目を開けると、ひょい、とブロンドの青年に横から覗きこまれていた
ジャンだ。バンドではギターをやっている。面倒見がよくてかなりの料理上手


『…なあに?』
「いや、昨日のライブ盛り上がったなって言っただけだよ」

わざと迷惑そうに眉をしかめながら答えると、シュンとなってしまった

『そうね、ロンドンでは半年ぶりだからどうなるかと思ったけど…最高だったわ』

ちょっとだけ可哀想に思い微笑むと、ニカッと明るい笑顔をくれた
(…忙しい人ね)
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