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□伯耆くんのハロウィン
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伯耆side



夏が過ぎ、まだ木々が赤く染まりきらない頃

街がオレンジに染まる



実「あ、その飾り可愛いね!」

『こないだ駅前の雑貨屋さんでみつけたの!』


伯「…………。」



読書を終えて居間の前を通ると例外なく、お屋敷もオレンジ色。



伯「……ハロウィンですか?」


実「あ、伯耆くん!」

『ふふふ。匡さんのお許しが出たので!』

伯「へぇ……」



それは珍しい。

あの匡さまが……



実「太郎くんもお菓子やお料理作ってくれてるんだよ!」

『ふふふっ。きっとご馳走だね〜!』



まぁ……



伯「……そうですね。」



楽しそうにしている姫様や翼さん。

それを見たら……断れないだろうな。

好きな相手の笑顔なら、なおさら。



『楽しみだねっ!』

伯「……ふふ。そうですね。」



僕だってきっと

断れない。

この笑顔には。

ずっと勝てないんだろうな……なんて考えながら

それもいいか、と思う自分もいる



伯「あれ、前鬼さんは?」

『あー……』



翼さんの傍でうろちょろする、いつもの影が見当たらない。



『前鬼さん……細かい作業苦手みたいで……』



苦笑する彼女をみて



伯「確かに……苦手そうですね」



僕も、笑う。



実「匡も付き合ってくれないんだよー?」

伯「匡さまはこういったものはお好きじゃないですから……」

『許可してくれただけでもいいじゃない!』



頬を膨らましながら作業する姫さまと

隣で嬉しそうな翼さん。



伯「…………。」



あ……これは。



伯「僕も手伝いますよ。」

『ぇ、いいの?』

実「わぁ、ありがとう!」


伯「ふふっ。はい。」



……株を上げるチャンス。



ーーーーー



日も暮れて、庭のランタンがオレンジの光を灯す

この独特の雰囲気……

妖々しさ。

それがまた天狗の屋敷だというのだから

面白いな、と廊下を歩く



伯「そろそろでしょうか?」

前「えーんちゃう?」

相「日も暮れましたしね。」

豊「そうゆう約束だろう?」


伯「はい。」



締め切った居間の障子。

中には姫さまと翼さん、恐らく三つ子も一緒だろう。

日が落ちるまで、男性陣は入室禁止令がでてしばらく経った。

大の男5人が障子の前に集まって、中の様子を伺う。

普段どれだけニコニコしていて、その笑顔に心動かされたとしても

そんな彼女達の機嫌を損ねたら

彼女達の心を動かすのは一苦労、と経験が知っている



匡「おい、実沙緒?入るぞ?」



やっぱり痺れを切らしたのは匡さまで

姫さまの返事も待たず、障子を開けた



実「待っ……」

『あっ……』


匡・相・豊・前・伯「あ……。」



白い障子を開けると

カボチャ色のふわりとしたワンピースを着た姫さまと翼さん

三つ子が眼に入った



実「待ってって、言ったのにっ!」

匡「言ってなかったじゃねぇか。」

『きょんきょんが返事待たないで開けるからでしょうっ!?』



ワンピースの裾を押さえながら恥ずかしそうな二人



豊「いいなぁ、コスプレ!」

相「鼻の下が伸びてるぞ。……前鬼。」

前「はっ!?お、俺っ!?」



確かに……姫さま達のワンピース、膝上……とゆうよりは、股下……って感じで

彼女の白い脚に眼がいっちゃうな……

少し、困る。



匡「まぁ、似合ってんな。当然だけど。」

実「もぉー、匡ってばぁっ!」



いちゃいちゃと始める二人と



『ど、どう………?』

前「ぇっ!?あ、え、えーんちゃう?」

『…………。』



目の前の二人。

前鬼さんのぶっきらぼうな言葉に、翼さんは少し不満そう



伯「よく、お似合いですよ。」

『伯耆くん!』



微笑むと



『ありがとうー!』

伯「ふふっ。」



彼女は嬉しそうに笑った。



豊「お。伯耆〜、点数稼ぎか?」

相「昼間も手伝っていたしな。」


伯「なんの事でしょう?」



厄介な絡み方をする大人を笑顔でかわす



『伯耆くんはそんな事しませんよ!ねっ!』

伯「ふふっ。はい。」


相・豊・前「…………。」



ごめんなさい。

とは、心の中だけで伝えておこう。





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