pioneerの内ポケ♪

□April fool
1ページ/2ページ

伯耆side


美「匡なんか大っ嫌い!!」


突然の姫様の言葉に



匡・八「………。」


空気が固まる。


前「ご当主…まぁた何かしたんか?」


匡「してねぇよ!!おいっ!美沙緒何だよ突然!!」


匡様……

そんなに慌てて。

本当に姫様が好きなんだなぁ。



伯「大丈夫ですよ、匡様。」

相「いちいち慌てて…」



匡「は?何がだよ。」


匡様はイベントには疎いから……


『あぁ!!そっか!!』


"お姉さん"も気づいたのかな。


美「今日はエイプリルフールだもん!!」

匡「エイプリルフール?なんだそれ?」



八「………。」


何故かはよく知らないけれど


伯「嘘をついてもいい日、ですよ。」

前「まぁたよくわからんイベントやな。」


こんなイベントを作らなくても……


相「嘘は色んな所に転がっていると思いますがね。」

豊「まぁ、そう言うな。意外に告白する輩も多い日らしいぞ?」

『えー?嘘つく日なのに?』

前「えらいややこしい話やな……」




盛り上がり始める僕達を他所に


匡「美沙緒……ちょっとこい。」

美「え……?」



予想以上に傷が深かった匡様はそそくさと姫様を自分のお部屋へ連れて行く…


『私も何か嘘つこうかな……』


翼さんはそう言って考え始めたけれど


前「それ今言うても誰も騙されへんのちゃう?」


『あ……。』


八「………。」


結局そのまま、その場はお開きになったけれど



しばらくして



『伯耆くん!!』


翼さんが僕を呼び止めた


伯「なんでしょう?」


多分、エイプリルフールの事なんだろうけれど…



『ふふっ、あのね?』

伯「はい。」


翼さんがつく"嘘"

少し、興味があるんだ。



翼さんはとてもウキウキした様子で




『私ね、伯耆くん大っ嫌いだよ!!』


伯「………。」


満面可愛らしい笑みで伝えられた言葉は


本来なら、破壊力があるものなんだろうけれど…



あまりに楽しそうに言うから


伯「……ふふっ。」



つい、笑ってしまったんだ。


『あれ?伯耆くんも駄目かぁ…』


伯「他に誰に言ったんですか?」


『まずは、太郎くん!!太郎くんは引っ掛かってくれたの!!』


………太郎。


『あと、相模さん。』


伯「兄さん、ですか?」


それはそれで


勇気があるな……



『凄い冷たい顔で大嫌いって言い返されちゃったよ…』

伯「……なんかすいません。」


『だ、大丈夫!!エイプリルフールだもん…大丈夫…』


兄さんの言葉の逆襲に涙ぐむ翼さん。


『後は、豊前さんにも言ったよ!!全然ダメだった!!』


失敗してもとても嬉しそうだな…


『大嫌いって言いながら両手広げてきたから逃げちゃった!!』


伯「ふふっ。そうなんですね。」


まぁ、翼さんが楽しそうにしてるなら、いいかな?



『なんで、バレちゃうんだろう?やっぱり美沙緒ちゃんと違う嘘の方がいいのかなぁ?』


伯「……それは」



きっと問題はそこだけじゃないような気がするけれど…



"想いを伝える"



豊前さんの言葉をふっと思い出したんだ。



伯「こういうのはどうでしょうか?」


『何なにっ!?』


はしゃぐ翼さんを前に


どうやって切り出そうか考える。


伯「今日はエイプリルフールですね。」


『え……うん。そうだね?』


翼さんは嫌いって言っていたけれど



伯「僕は、翼さんが好きですよ?」


『……っ!?』


びっくりした表情の翼さんは



『ぇ……あれ?…エイプリルフール、だから…ん?』


すぐに困惑した表情に変わる。



伯「ふふっ。じゃぁ僕はこれで。」



追求される前に立ち去る。



エイプリルフールだからと言って



"嘘"を言うとは限らないから。



伯「驚いてたな……」



僕は



黙ってた気持ちを伝えられただけで……



『伯耆くんっ!!』


伯「っ!?」



背後から呼び止められて


振り向く。



『ありがとうっ!!』


伯「ぇ……」



それだけ言って


去っていく翼さん。



伯「………。」


その後ろ姿を黙って見つめる。



僕は"嘘"はつかなかったけれど




"ありがとう"って



微笑みが返ってくるとは



思わなかったんだ。




伯「参ったなぁ……」



この想いは



すぐには



断ち切れそうにないかな…?




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ