pioneerの内ポケ♪

□バレンタイン
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翼side


まだ、2月のお話。


美「翼ちゃんっ!!ちょっといい?」


凄い勢いでお屋敷に飛び込んできた美沙緒ちゃん


『ど、どうしたの?』


何事…っ!?


私だけじゃなくて、匡さんは勿論


八大さんの視線も集まってる


美「今日バイトないよね!?」

『ぅ、ん…』


私が返事するなり


美「匡!!前鬼さん!!翼ちゃん借りるねっ!!」

『えっ!?』


前「…おぅ。」


匡「おい美沙緒!俺も…」

そうしてバタバタと連れ出された私


たどり着いたのはファミリーレストラン…



『…どうしたの。』


美沙緒ちゃん…?


私、まだ部屋着だよ…?


さすがに徒歩10分のファミレスでも、恥ずかしい…



美「あのね、相談に乗ってほしいんだっ!!」


『お屋敷じゃだめなの?』

…だから、ここに来たんだろうけど。


美「だって匡いるし…今日家にお父さんいるし…」


つまり、匡さんの話なのかな?


『バレンタイン?』


美「っ!!」


私の言葉に、私の手をガッと掴む美沙緒ちゃん…



美沙緒ちゃん…?


ちょっと力が…強いかなぁ…


美「翼ちゃんなんでわかったのっ!?」


なんでって…


『街中はバレンタイン一色だし…ファミレスのメニューもバレンタインだし…』

うちのカフェもバレンタイン企画やってるしなぁ…


美「でねっ!?何をあげたらいいかなぁ?」


『………チョコ?』


美「それじゃダメなのっ!!」


『っ!?』



話を聞いてみたところ…


去年はチョコディップで痛い目を見たと…



『いや、もぅ何て言うか…』


最近の高校生、大人だなぁ…


美沙緒ちゃんの話に頬を染めちゃったょ…


美沙緒ちゃんのパフェも溶けかかってる…


『でも…やっぱ美沙緒ちゃんがあげるものなら何でも喜んでくれるんぢゃない?』


月並みだけど…


匡さん、美沙緒ちゃん大好きだし…



美「翼ちゃんはっ!?何あげるの?」



『え…?』


二杯目のコーヒーに口をつける


私…?


美「前鬼さんに!!」



ごっくん…


大きな音を経ててコーヒーが喉を通過した。


前鬼さん…?


『なんで…?』



美「えぇぇぇぇっ!?」


『っ!?』


ざわっ…ざわざわ…


美沙緒ちゃんの声に店内がざわつく


『みみみ美沙緒ちゃんっ!!声大きいよっ!?』


視線が…


お、落ち着こう…


再びコーヒーに手を伸ばす


そんな私に構わず美沙緒はグッと拳を握った


美「ダメだよ!付き合ってるんでしょ!?」


ガッチャン


指から滑り落ちるカップ…

店「お取り替えいたします。」


『すいません…』


店員さんにぺこっと頭を下げる


店員さんはすぐに新しいコーヒーを持って来てくれた…


『…付き合ってないよ。美沙緒ちゃん、パフェ溶けてるよ?』


美「そうなの?前鬼さんあんなに翼ちゃんが好きそうなのに…」


ようやくパフェにスプーンをさす美沙緒ちゃん。


私も落ち着こう…


今度はしっかり両手でカップを握る。


まぁ…大事にしてくれてる…よね?


美「好きって言われたんだよね?」


ごっくん…


『ごほっ…それは…匡さん?』


美「うん。皆の前で言ったんでしょ?」


うぅ…恥ずかしい…


『まぁ……その…今はまだ…』


しどろもどろな私に美沙緒ちゃんがハッと何かに気づいた


美「そっかぁ、早く全部解決するといいね?」


『…そだね。』


美沙緒ちゃん、やっぱいい子だなぁ…


美「ぁ、じゃぁ今年は翼ちゃんが前鬼さんにチョコディップあげるのはどう?」



ップパァー…!!!


美「翼ちゃんっ!?」


思わず飲み込めずに吹き出したコーヒーにビックリな美沙緒ちゃん…


いや、もぅ…


私もビックリだよ…


『ごほっけほっ…美沙緒ちゃん…さすがにそれはちょっと…』


いつになっても出来そうにないかなぁ…?


美「でもね、日頃の感謝を伝えるのは大切だよっ!!応援するからっ!報告してね!?」


『ぅ、うん…?』



日頃の感謝を


応援、報告…?


美沙緒ちゃん…願望がだだ漏れだよぉ…



遠い目で窓の外を眺める


『…ん?』


見慣れた人影…



『美沙緒ちゃん、匡さんが迎えに来てるよ?』


ほら、と外を指差す。


美「本当だっ」


『なんか…寒そうに早くこいってジェスチャーしてるね?』


美「うん…そうだね…」


そのまま、話は解決しないままファミレスを出る事になった…



匡「おっせぇ!!どんだけ俺を待たせんだよ!!」


待っててなんて言ってないのに…


匡さん、本当に美沙緒ちゃんが好きなんだなぁ…


美「ごめーん!!」


匡「ちょっと…散歩して帰るか。」


美「うんっ!!じゃぁ、またね、翼ちゃん!!」

ルンルンな美沙緒ちゃん


可愛いなぁ…


『うん、バイバイ!』


二人の背中に笑顔で手を振る



『…で、前鬼さんはどうしたんですか?』


もう一人の人影。


前「どうした…って。ホレ。」


そう言って前鬼さんはコートを差し出す。



前鬼さんの…コート?


前「そのまんまじゃ寒いやろ?風邪ひくで?」


部屋着のまま連れ出された私を心配してくれたのかな…?


『ありがとう…』


袖を通すと少し…だいぶ大きなコート。


前「翼小さいなぁ…」


『前鬼さんが大きいんだよ…』


前「んじゃ、行くか。」


『うん。』


夕暮れ時


10分の道のりをゆっくり歩く


『あ…』


前「なんや…?」


『ううん。何でもない。』

そう言えば…


前鬼さんいつも車道側だな…



『感謝、かぁ…』



今年は少し、頑張ってみようかな?





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今さらながらバレンタイン更新しました…
前鬼さん出番少なくてごめんなさい(>_<)

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