ぽかぽかフェチズム

□ぽかフェチ3
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前鬼side



ゴールが遠退いた……と思いきや



ソワソワ
前「……。」

『適当にしてて。』



なぜか、名無しさんちゃんの家に招かれた。


これは……進歩やんな?かなりの進展やろっ!?


学校から歩いて数十分


立派なマンションの七階


4LDKの部屋……からして、一人住まい用やのうてファミリーマンションなんやろうけど


そのわりに、玄関には名無しさんちゃんの靴だけやった。


みな、まだ帰っとらんのやろか?



前「名無しさんちゃんが飯つくってくれるん?」

『うん。』


前「今日のメニューはなにー?」

『ハンバーグ。』


前「ほぅ。」



そら、楽しみやな。


名無しさんちゃん料理上手やし。



『ぁ。お風呂あるよ。』

前「……せやろな。」


『入る?』

前「は……っ!?」



俺が……


名無しさんちゃん家の……


風呂に?



前「はっ!?えっ、へっ!?」

『嫌ならいい。』


前「や、嫌……や、ないねんけどっ」

『?』



名無しさんちゃんんん〜!?


風呂って!


家の人居らんのにマズイやろーっ!!


二人きりやねんで?



『……こねこね。』

前「……。」



なんっちゅう無防備さ……



『やきやき……』

前「……。」



俺……もしかして、試されてんやろか?


もし、や。


マズイ所で家の人ぉが帰ってきたら……


自分で言うのもなんやけど


俺……誤解される自信ある。


したら、余計名無しさんちゃんとの距離できてまうし……


誘惑に負けたらアカン。



前「あ、あ〜……」

『うん?』


前「家の人は何時くらいに帰ってくるん?」

『……大丈夫だよ。気を使わなくて。』


前「……。」



無茶やろ。


さすがに気ぃつかうわ。



『皆いないから。』

前「へ?」


『一人暮らし。』

前「あ……そう、なん?」

『うん。』



こんな広い家やのに


一人って……



『みんな死んじゃった。』

前「……え」



名無しさんちゃん……今、なんて?



『入学式の日に……車の事故で。』

前「ぁ……」



え………


名無しさんちゃん……さらっと言うたけど


俺……どないな顔したらえぇの?



前「そう、なんや……」

『うん。』



そんなん……初めて知った……


なんて言うたったらえぇ?



『……前鬼くん。』

前「お、おう。」



なんか……してやれるやろか



『クリーニング……貰うの、忘れた。』

前「え……あ。」



そういえば……



『ジャージ、よろしく。』

前「お、おう……」



今俺に出来るのは


ジャージを貸したる事くらいやろか?




ーーーーー



前「うまっ!」

『よかった。』



ハンバーグを二人でつつく。


広い家に二人っちゅうのも、寂しいもんやけど


一人は……もっと寂しいやろな。


なんて


俺の価値観で勝手に決めつけたらアカンな……



『あ。今日ドラマの日……』

前「名無しさんちゃんはテレビも好きなん?」


『うん。』



好きなモンたくさんやな。


名無しさんちゃんと話すと、どんどん新しい名無しさんちゃんを知る事が出来る


せやけど


ちぃっとも近づいた気ぃせんのはなんでやろ?



『ハンバーグも好き。』

前「そか。」


『オムライスも。』

前「あれは旨かったなぁ。」



とろとろ……


あんだけの腕前があれば大したモンや。


俺は家事はてんでダメやし。



『また作る。』

前「さすがに調理実習、同じメニューは……」


『もう来ない?』

前「え?」



もう来ないって……


また作るって……



前「え、俺に?えぇの?また来ても。」

『来たければ。』


前「……。」



なんか……名無しさんちゃん不器用な子ぉやな。


誘ってくれとんのか、ちゃうのかようわからん。


けど



前「ならまたお邪魔するわ。」

『うん。』



名無しさんちゃんがえぇっちゅうなら


俺はまた来るで?


この空間は、学校の奴等は知らんし


独り占めできるやん?



『お家でだれかとご飯……久々。』

前「そか。」



親戚とか居らんの?ってきいたら


学費と仕送りは援助してもろとるらしい。


煩わしく思われとるのが分かるから、世話になるつもりもあらへんのやって。



前「……ふぅん。」



なんか……


嫌やなぁ。


そう思う俺に



『楽チンだし、怒られないから自由。』

前「……。」



名無しさんちゃんはストーブの前で体育座り。


まぁ……自分だけの帝国を楽しんどるならえぇねんけど。



前「洗い物、俺しよか?」

『う?……うん。』


前「えぇよ、そんくらい。」

『ありがと。』



制服のまんまごろごろストーブの前に転がり始めた名無しさんちゃん。


むっちゃ眠そう……



前「制服、シワになんで?」

『ん〜……』


前「転がるなら着替えてき?」

『……ん。』



のそのそと起きた名無しさんちゃんが、ぺたぺたフローリングの上を歩き


パタン


自分の部屋へ帰ってく。


ガチャ


戻ってきた名無しさんちゃんは



前「お。可愛えぇなぁ。」

『っ!?』



もこもこした生地のルームウェアに着替え


もこもこしたフードを被っとった。


撫でまわしたくなるなぁ?



『か、かわいくない。』

前「お……。」



……照れた?


可愛えぇなぁ。


えぇモン見た。




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