infringe×前鬼

□重ね付け
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千代side



嘘を塗ることが正しいのか


悪いのか



それは関係ないの。



気づいちゃいけなかったのよ。



私には何も選べない。


道は一つだけ。



"300年ぶりの無比力夜叉"


それは



逸材、ってやつで



そのポジションに就くための絶対的な"力"が必要。



たまたま、その力を生まれ持った私は



立派な称号を押し付けられただけ……



『私の身体を喰らいなさい。』



夜叉族で私だけが持つ体質。


仙果のように私の身体を喰えば、神の力を手に入れることが出来る。


生憎、血だけじゃ力は渡せないけど


肉を喰えば、力は手に入る。



でもね?



その力に喰った者の身体がたえられるかは知らないわよ?



母「妾の子の分際で…」



嫉妬深い母が、私を喰わなかったのは


父に守られ続けていたからじゃない。


周りの鬼が私を喰わなかったのは



その力が自分を乗っ取り破滅へ導くから……



その逸材が自分の子ではなく、旦那と愛人の子ならば憎さも有り余る母の気持ちもわかる。



その逸材へ周りは"鬼を喰う者となるよう"声援を送り



私はこの身体と共に生きてきた。



『私のペットに私がどんな罰を与えようと自由では?』



だって


私に前鬼さんに罰を与える資格はないもの。



私がいつ力に覚醒して



天狗の郷を



この世を滅ぼすか



わかんないんだから……



そんな私を信用するなんて



"好き"だなんて



気がしれない。




そんな自分をどうやって愛せというの?



いずれ、神に裁かれる身なのよ……








屋敷から郷に出ようとした私の元へ



赤「千代しゃま!!」

青「お供致します!!」



従順な小鬼が姿を現す。


このタイミング……



『盗み見してたわね?』


赤・青「……えっと。」



『そーゆうの、人間界ではストーカーって呼ぶらしいわよ?』



じとっとした私の視線に



赤「すかーと?」

『違う。』


青「人間界の言葉など!!」
『……。』



いつも通りの二匹。



まぁ



でも



そんな私に怖がらずに寄ってきたのはこの二匹くらいで……


貴方達のお陰で、私は一人じゃなかったの。


感謝してるのよ?




『一人で大丈夫よ。』



盗み見は見逃してあげる。


私の笑みに



赤「でも……」

青「お供を!!」



ちっとも引かない小鬼。



『相手は天狗。覚醒しなくても殺されりゃしないわよ。』


赤・青「……。」



それに



『暇なら、この屋敷を守っといてくれない?』


赤「天狗の?」

青「我々は千代様の遣い獣です!天狗など…」

『あーお?』



言ったでしょう?



『私の遣い獣ならば、差別はやめなさい?』


青「……はい。」

赤「お守りしましゅ!!」



嫌いなものと好きなものに囲まれて世界は彩られてる。



何もかも思い通りにいかない、私にとっての一本道



夜叉としての定めは変えられなくとも




馬鹿みたいに真っ直ぐで


私を優しいだの信じるだの言って動揺させて


作り笑いが下手過ぎる


唯一温かさをくれる人




『私にも、守りたいものくらいあってもいいでしょ?』



夜叉としては失格だけど……


赤「……はい」

青「お早いお帰りを。」



心配そうな顔しなくても


『……すぐ戻るわよ。』



夜叉として


数人の天狗を殺すだけ。



それだけよ。


ーーーーー
千代side



甘いアメを目の前に


「……っ」



天狗は遠巻きに見つめていい子にお預け。



スガヤ様も


馬鹿げた仕事を押し付けたもんね……


自分の手は汚さないんだから


お気楽なもの。


貴方は奪えるだけのモノを奪えと言うけれど


私は


奪わないで済むものは奪うつもりはないの。




天狗の郷を一人、ぷらっと歩いても餌に食いつく輩は少ない。



「覚悟っ…!!」


でも、たまに居るのよ



ザンッ…

「……あ"」


ビシャッ

『………。』



せっかちが。


『あーぁ。』



血渋きを浴びて服は赤く染まる。

顔についた天狗の血を拭い、遠巻きに見つめる民を見渡す。



『……次はダレ?』


その言葉に


「「キャーッ!!」」



逃げ惑う群れ。


命は果てるもの。


大事に使いなさいよ。




ベチャ…
『………。』


足元に転がる天狗の血に染まった手が私の足を掴む。


「飢餓の地で…優雅、にっ呼吸する気分は…どうで、すか……」

『………。』



ニヤリ笑った天狗の皮肉に



『………最低な気分ね。』


最後の言葉を返し


グジャッ……



「「………っ!!」」



天狗の頭に刀を刺し潰した。



犠牲者一人目。





この力を手にするには


代償は大きすぎるものよ?



『……次は?』




それでも


窮屈な力が欲しいんでしょ?



「ぅ…あああっ!!」

「死ねぇ!!」



バタバタと奪われるために向かってくる天狗。


死ねって……



『誰に向かって言ってんのよ……』



バッ…ザザンッ……





失うために求めるなら


好きなだけ奪ってあげる。


犠牲者二人目


犠牲者三人目…






さぁ



大衆よ





好きなだけ欲に狂って踊れ……


"
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