pioneer×前鬼

□涙の箱
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翼side


朝…


起きるとやっぱり頭痛は消えていて





首の傷まで消えてた。




同じカップ2つを用意して片方に石を入れると、





それは涙のタンクになると聞いたことがある。





空のカップ、石を入れたカップ




両方に水を入れると


同じ大きさのカップでも、先に石を入れたカップから水が溢れる。



水が涙で




石が抱えてる悩みや不安だとしたら…



カップは涙のタンクに変わる。



石が多ければ多いほど



早く溢れ出す。




私のタンクの石がどれ位かは分からないけど…




きっと




限界だったのかな?




吐き出した事で気持ちまで楽になった気がしたの。




『あ、前鬼さん。おはよー』

居間へ向かう途中で彼の背中を見つけて声をかけた。

朝日に彼のキレイな髪が照らされてる


前「…おぅ。翼、おはよぅさん。」



『今日は少し温かいね〜』


前「…せやな。」



私の涙を一番見てるのはきっとこの人だろうな…




夢の話を笑わずに聞いてくれる人





さすがに




男の子が赤い髪で、独特の話し方で


あなたに似た共通点は伏せて話したけれど…





時間が経てば


それが本当は誰なのかわかるんだろう…




『……。』


大きい手だったな…


身体だって…がっちりしてるし…



うん、あれは…


まさに、男の人って感じだった。



昨日の一部始終を回想して気恥ずかしくなった。



前「バイトって今日行ってから休みやったっけ?」


前を歩いてた大きな背中が、突然振り返る



『っ!?え?え、あ、うん。』


前「…なんやその返事。」

『あ、いや…なんでも…』

恐ろしく上手くやれない私を見て



笑う



その瞳に



胸が



キュッ…て


鳴ったのは、内緒。




ーーーーー


前鬼side


こいつ…ちゃんと話きいとったんか?




前「なぁ…バイトって今日行ってから休みやったっけ?」


『えっ!?え?え、あ、うん。』


前「…なんや。その返事。」

ホンマ、きいとったんか?


昨日の事は



こいつは知らんハズやのに


なんやねん。


少し顔合わせんのに緊張しとる自分がおる



ホンマ、柄にもない。



やましい事はするもんやないな…



まぁ…





抑える自信もないんやけどな。


『うわっ!?すごーい!見て前鬼さん!!』


前「っ!?」


『すっごい量のパンケーキ!!』


前「……。」

太郎が用意したパンケーキにはしゃぐ翼。


前「…子供か。」


『だってぇ…』



にこにこ笑う翼



それを見て温かさを感じた。



まぁ、ええか。







今はこのまんまでも。





この想いはまだ前進中。

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