ぽかぽかフェチズム

□ぽかフェチ10
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前鬼side



アカンわ。


もう、ぜんっぜんアカンわ。


試しに背中から抱きしめてみても



『アイス食べるの止めようかな。』

前「は?」



名無しさんちゃんの反応はサッパリやし。


つか意識は俺よりアイスやし


……まぁぁったく、意識されてへん。



前「名無しさんちゃんて……」

『ん?』


前「やっぱしアホなん?」

『……。』



心配やわ……


ようこんなで恋多き時代をやり過ごしてきたモンや。


兄さんが何とかしてくれとったとして


今は……そうはいかへんのに。


こないホイホイ男を家にあげてもうて、挙げ句に泊めようとするわ、抱きしめられても、アイス優先……


大丈夫なんやろか



『……私より馬鹿なごぉくんに言われたくない。』

前「馬鹿は余計や。」



やって……鈍すぎにも程があんで?



前「さて。お前らはそろそろ寝る時間やで。」

太・次・三「え〜……」


前「名無しさんちゃんにも迷惑かけたらアカン。ちゃんと寝ぇや。」

『じゃあお部屋案内する。』



……そういえば


名無しさんちゃん家には何度か上げてもろたけど


リビング、風呂場、名無しさんちゃんの部屋


……それ以外は見た事あらへんな。


4人家族で住んどったでっかい家やし……部屋は幾つかあまっとる。



『……ここつかっていいよ。』

前「…………。」



名無しさんちゃんの細い手が、今まで覗いた事のない部屋のドアノブを掴み


扉をあける。



前「ぇ………。」


太・次・三「わぁぁ、広いっ!!」

『ふふっ。好きに使っていいよ?』


太・次・三「わぁいっ!」

『ごぉくんもこの部屋つかう?少し狭いかな。』

前「…………。」



名無しさんちゃんに話かけられとる


何か答えな……



『ごぉくん?』

ハッ
前「え、えぇよ俺も一緒で。」



……こんなん


俺が気にしたらアカンやろ。



『……つまり、泊まるの決定ね。』

ハッ
前「あっ……!?」

太・次・三「わぁいっ!にぃさまも一緒!」



……しもたぁぁっ!!


つい、平然装って答えてもうた!



前「いや、今のは……」

『決定ね。よし、みんな布団敷くぞ!』

太・次・三「おーっっ!」


前「……ハァ」



まぁ、えぇか。


リビングでボーッとしとれば朝なんてすぐや。


さすがに


……名無しさんちゃん家では寝れへん。



太「広いお部屋ですね!」

前「ん?あぁ………せやな。」



もの一つ置いてへん


カーテンしかあらへん、なんもない部屋


立派な家やのに


違和感しかない部屋。


閉ざしたまんまやった、空間




ーーーーー



カチャ……


前「……名無しさんちゃん。」

『あ。みんな寝た?』

前「おぅ。」



あの部屋の事は……


触れんほうがえぇか。



前「部屋……おおきに。」

『ううん。』



せやのに


触れてまう。



前「寮やと泊めてやれへんしな。助かったわ。」



……アホやな、俺は。



『まぁ、一人暮らしだし。使ってないから。』

前「……そか。」



なんともないよに返す名無しさんちゃん



『だから困った顔しないで。』

前「へ……」


『ごぉくんたまに、困った顔。哀しそうにする。』

前「ぁ………」



気に……しすぎて


俺が心配されて、どーすんねん。



『ごぉくんも、嘘が下手。』

前「あ〜……そやろか。」


『ふふっ。うん、そだよ。』

前「……ん。」



見透かされてもうてんなら


隠してもしゃあないか



『ごぉくんは変。』

前「そか?」


『お兄ちゃんみたいなのに、お兄ちゃんじゃないから。』

前「……そやな。」



俺は……頑張っても名無しさんちゃんが会いたい人にはなってやれへん



『だけど、一緒にいるとぽかぽかする。』

前「ぽかぽか……?」

『うん。何かそんな感じ。』

前「……そか。」



よう分からんけど


兄さんにはなってやれへんけど


名無しさんちゃんが俺に会いたいと思うてくれた時は、いつでも行くで?



『ごぉくんごぉくん。』

前「ん?」


『私も。』

前「名無しさんちゃん……」



あれ?気持ちつたわったん?……なんて、勘違いせぇへん。


散々経験して身についてもうたわ。


頼むから


主語つけてくれへん?



『私も、寝かしつけて。』

前「あぁ……」



寝かしつけ……



ピタッ
前「……は?」

『え?』


前「なんて?」

『寝かしつけて。』



寝かしつけ……



前「え?へ?は?」

『眠くなってきたから。』


前「なら、はよ寝たら……」

『だから、私も寝かしつけて。』


前「…………。」

『…………。』



いや……


ぃゃぃゃいやっ……!!


ワケわからんっ!!



『弟くんたちだけズルイ。』

前「ぃゃ……ぇ、えと……」



寝かしつける……って……



前「ぃゃ、名無しさんちゃん弟ちゃうやろ?」

『うん。』


前「つか、一人で寝れるやん。」

『嫌なの?』



……名無しさんちゃん


その切り返しは卑怯や


名無しさんちゃんのいつものパターンや。惑わされたらあかん。


って、わかっとっても……



前「ゃゃや、やって、大人やのに可笑しいやろ?」



心臓が……


いけるんちゃうかって、ドキバクしとる



キョトン
『え?でもお兄ちゃんはしてくれたよ?』

前「・・・・。」



……な?


ほらな?


こんなんやと思うてん。


ブラコン妹が。



前「……ッチ。」

『え?なに?』



俺の春はまだまだ遠すぎて


もう涙すら出ぇへん。


えぇねん。


期待した俺が悪いねん。


俺がアホやねん。


……ぐすん。




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