フェイク×前鬼

□ジュエリーボックス
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前鬼side



翌朝、店で会うた二人は



前「……えらい眼ぇ腫れとるな。」


舞・名無しさん「………。」



瞼が腫れとって……
せやけど



前「……良かったやん。」



笑ったると



『ふふっ。ありがとうっ!!』


前「…俺は何もしとらん。」



それを笑顔で返す名無しさんに、ホッとしてん。


けど、なぁ……



舞「………。」


前「なんや?」



じぃっと、俺を見つめる舞。



舞「お礼に一言いわせて?」


前「……なんや?」



なにを言い出すのかと思えば
小声でポソッと




舞「"名無しさんは勘違いしてくれへんの?"」


前「なっ……!!?」


舞「……っぷ。」



なんでっ……お前がソレを!!

ぶわっと顔が熱くなんのが自分で嫌って程分かった



『……どうしたの?』


舞「ううん?何でもないっ!!」

前「……っ」



どうしたの?や、あらへん!!
名無しさん……お前よりによって、なんでコイツに話したんっ!!?



舞「……本当に"そのまんま"なのにね?」


前「こら舞……お前っ!!」



ホンマ……豊前そっくりやな。



『な、なに……?』


前「……なんでもあらへん!!」



俺も、豊前に話してもうたしな?
しゃぁない……のか?


でも……



『舞っ!!早く着替えないと……!!』


舞「待って!!」


前「……俺は置いてきぼりかい。」






名無しさんの笑顔が戻ったんなら、えぇか。



ーーーーー
名無しさんside



柳「顔上げてくださいっ!!」


『ごめんなさぃ……』



寄せられた想いを突き返すのは、やっぱり気が引けた……

そんな勇気、私にはないから……



柳「分かってたんで!!気持ちの整理がついて良かったです。」


『ぅ……でも……』


柳「ちゃんと返事してくれて、嬉しいっす!!」


『遅くなってごめんなさい……』



仕事後、柳くんの気持ちに返事をした。
それもやっぱり勇気がいったけど……

自分ばかり守ってないで
周りを見ることも大切なんだって、教えてくれた人がいたから……



柳「明日から、いつも通りお願いします!!」


『こ、こちらこそ……』



シフトの事も……

本当は私に信頼が足りなかっただけなんじゃないかな?

私が、周りに期待していなかったように。



夕暮れの空を見つめ、一人歩く。



世界が変わらなくても
フィルターを代えると、見てなかったものが見えて……



『………ぁ。』



通り過ぎようとした公園のベンチ
赤に染まる、赤い髪の彼の姿をみつけた。



『前鬼さん?』


前「ぉ。名無しさん……」


『何してるの?』


前「あ、あ〜…散歩、や。」



私の声に顔をあげた前鬼さん……



『散歩って……座ってたじゃない。』


前「きゅ、休憩や!!」


『ふぅん?』



なんとなく、前鬼さんの隣に座る。



前「舞から聞いてん。柳に返事したんやろ?」


『ぅ。……はい。』


前「ん。お疲れ。」



そう言って、缶コーヒーを差し出してくれる前鬼さんに勧められて



『……準備いいね?』


前「たまたま、や。」



缶コーヒーを受けとる。

いつの間に……
前鬼さんの傍が、こんなに安心出来る場所になったんだろう?



前「なぁ。」


『んー?』


前「舞と、元に戻れてよかったな?」


『……うん。』



前鬼さんのお陰、だなぁ。



新しいフィルター


角度を少し変えて見つけた世界は




案外、素晴らしいものかもしれないな……



『いつから居たの?』


前「来たばっかし、や。」


『……ふぅん?』



あの時、つい無意識に出てしまった言葉は



もう少し



しまっておいてもいいかなぁ?



私にはまだ、伝えるには勿体無いから。



前「……なぁ。」


『ん〜?』



ぎこちなく口を開いた前鬼さん。
髪を掻きながら……



前「柳に……なんて返事したん?」


『………。』



前鬼さんの顔が赤く見えるのは
……夕日のせいかな?



『……気になります?』



なんて冗談めかして聞いた言葉に



前「……いけんか?」



真っ直ぐ答えてくれる。



『……ふふっ。ううん?』



勘違い、だとしても……
もう少しだけ貴方の隣に居たいから



『断りましたよ。』


前「そか……名無しさんは…」


『はいはい?』









前「名無しさんは……好きな奴居らんの?」


『………。』



勿体無いから……


もう少し、自分を愛せるまで


芽生えそうなこの気持ちを



『ふふっ。……どうでしょう?』


前「なんやそれ……」




しまっておいてもいいかなぁ?





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