infringe×前鬼

□ステップ
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千代side



私を奮わせた




小さな一言


"私は…信じたい"




何だかずいぶん大切な声だと思えたの。





私は八大夜叉


300年ぶりのアリガタイ力を受けた無比力夜叉。


私に守ってもらえるんだから


光栄に思ってよ?




『赤、青?私を結界で包んで?』


赤・青「それは……」





気づいた力に見ぬふりは出来ない。



それでも




"信じたいもんを信じとるだけや"



私も、希望を抱きたいのよ。





『覚醒、するわ。』


匡・八「……っつ!!?」

赤「千代しゃまっ!?」

青「お力が……?」



振り向けば


誰しも不安な顔



『えぇ……』



大丈夫。


とって喰ったりしないわよ。



"千代なら大丈夫やな"


その声を


私も信じたいのよ。




窮屈すぎた世界



決まりきった世界があるなら



そうじゃない世界があってもいい。




赤「わかりましたっ!!」


青「ご武運を…」



『大丈夫よ。』



彼を喰い

世界を滅ぼすのは嫌だもの。



もちろん、スガヤ様に黙って喰われるつもりもない。


スガヤ様?


思い通りにいかない……




それが世界ですよ?



だから、



学ぶ事ができる……





勇気を




生きているという事を。





『早くしないと、やってくるわよ?』

匡・八「……っ」

赤・青「はいっ!!」






貪欲に甘美な汁に味をしめた


我が主のペットが……



『さぁ……。』




次の世界へ目指すための



私だけのステップを踏もう……


ーーーーー
前鬼side



小鬼の結界の中


民や俺らに見守られた千代は




匡・八「っ!!?」

「「……っつ!!」」



なんや、これ……



みるみる妖力が高まっていく……



相「これが……」

伯「無比力の力…」


前「千代……」



ぞくぞくとかけ上がる悪寒……


絶対的な力……





バチンッ!!


赤・青「わぁっ!?」

匡・八「っ!!?」



小鬼らの結界は千代の妖力に弾かれ


破れ……






『……っ。』




そこに佇む千代




前「千代……?」







ざわざわっ…


民がそれに気付き、恐怖が広がる……




「九尾だっ…」

「喰われるっ!!」



遠くに見えたんは、片足を無くした


神獣、九尾の狐……




匡「……ッチ。八大、行くぞ!!」

前「おぅっ!!」



ご当主の声に我にかえる。


郷を、守らな……











『待って。』



匡・八「っ!?」




千代?



ようやく顔をあげた千代の






瞳は




前「千代……」


『天狗が行ったら喰われるだけよ?』




薄茶じゃなく


深紅の瞳……






前「お前……」



覚醒したか、は


纏っとる妖力でわかる。


でも



力にのまれてへんのか……?




匡・八「……っ。」

『………。』



僅かな緊張に








『なんて顔してんのよ?』



ふっ、と


小さな笑みをみせつけた




ーーーーー
千代side




隣り合わせの自分が消えた時


身体が軽くなったの。




『なんて顔してんのよ?』



大丈夫だ、と
笑みをみせつけ



『……守ってみせるわよ。』






人ゴミを抜け


大地を蹴って


風を切る……











スガヤ様は権力を振りかざす事がお好きなようで


我が儘に

さも当然かの如く



世界を、命をコントロールしたがるけれど…




『ぶっ壊してやる……っ!!』



本当に価値あるものは


力なんかじゃない



少なくとも、私にとっては。



人類は醜くても


世界は汚れていても





答えはきっと、一つじゃない。





『足をなくして変幻もできないの?』


九「……っ」



九尾の前に立ち、ニヤリ笑ってやる。









利口なフリで意思を騙し続ける、ふがいない自分より


今の私が見た世界は


案外素晴らしいものよ?






九「当主に逆らう罰を知っての事か!!」


『ええ。』



素敵じゃない?

こんなに生きている事を感じた事はない。





九「天狗のためになど…っ」


『私はもう夜叉族じゃないわよ?』



簡単に人を値踏みして笑う程の権利は誰が持つモンじゃないのよ……っ




『スガヤ様の滑稽な姿も見てみたいし…ね?』


九「……っ」






次の世界をみるために




ぶち壊し




嵐を巻き起こせ……


"
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