infringe×前鬼

□ステップ
2ページ/3ページ

千代side



利点……って呼び方が正しいのかはわかんないけど



「匡様っ!!」

「ご説明をっ!!」




号令かけなくても民は自分たちの意思で集まってくれるから楽でいいわね



せっかく解放を伝えたって言うのに



天狗の民は





「神獣なんてっ!!」

「郷が潰れてしまう…」

「我々を餌になされるおつもりかっ!?」




なんて言うか……



『相変わらず、って感じね……』


前「千代……お前それ呆れとるんか?」



呆れる?


まさか




『関心してるのよ。良くも悪くもマイペースな民に。』



少し前なら、呆れてただろうけど……




『1分1秒を争う場だっていうのに……平和ボケできるんだから。』


匡「おい…」

前「それ」

相「誉めてませんね。」



誰も、誉めるとはいってないでしょ?


呆れてないってだけよ。




『……で?どーすんの?』

匡・八「………。」



集まった民を見下ろす。



『逃げるの?留まるの?早くしないと喰われるわよ?』


「「………っ!!」」



民が息を飲むのが空気で伝わる。

彼らは次にはきっと……




「郷を捨てろとおっしゃるのかっ!?」

「無茶苦茶だっ…」



非難を飛ばす。



匡「落ち着け!!今そんな余裕は……」


『まったく……』



非難、非難、非難に否定……



『哀れね。』



あまりにも少しまえの私に似てて……


可哀想になるくらいよ?




『そんなに怯えなくてもいいわよ。』


匡「千代……?」




隣を見渡せば、天狗の当主に八大さん…


それに……小鬼。




私に、彼が居たように


小さなお友達が居たように



『私が、あんた達まとめて救ってやるわよ!!』


「「……っつ!!?」」

匡・八「千代……」



……命をかけて、ね。



『信じる者だけ救ってやるわよ!!』



その強さを持つ者がいるなら、奪わず夢を見せるのもいいじゃない……?



『さぁ…どうする?』



決めるのは貴方達次第。



絶え間なく歪みあって


変わらぬ自分を繰り返すのか



人を期待してみるか





ご自由にどうぞ?



「「……っつ」」


匡「どうなんだ?」

前「はっきりせぇ!!」




鎮まった民は



「でも…」

「神獣を相手になんて…」



『あぁ、貴方には言ってない。』



信じたなくないならそれでいい。



「我等には敵わぬ…」

「神獣を傷つけるなど…罰を受ける…」



『うん、なら無視してくれていいわ。』



弱い心を引き上げる程親切じゃない。



「鬼が天狗を喰うのに…」

「貴方をどう信じろとっ!?」



『なら、相槌すらも望まないわ。』



言い訳を繰り返して、それは誰に向けた言い訳?


私?


それとも、自分自身?






どんな時間が無駄かわかるでしょう?


「もう駄目だ…」

「郷を捨てるのかっ!?」

「どうしろとっ!?」




ソレが無駄なのよ。



ずっとその繰り返しを続けるの?



不安を隠しては



不安に追われるつもり?





『ねぇ。皆それでいいの?』






それじゃ、今までと変わらないわよ?



『期待を夢みる者は居ないのっ!?』


「「……っつ」」



今の惨めな自分達で満足してるならいいけれど……


信じる強さを持つ者は……




「私、は…夜叉様を……」



小さくふるった勇気を



「何を言っている!?」

「信じるつもりかっ!?」







周りがとやかく言う権利なんてないのよ……



『外野はほっときなさい。大した事なんて言ってないのよ。』


「あ………」



そうやって非難を続ければいい。

自分を正当化するために。




やがて


静寂をやぶり





「私は、信じたいっ!!」


匡・八「……。」



小さな勇気が響く。



『そぅ……』





耳に届いた勇気に思わず俯く。



匡「おい……?」

伯「千代さん?」

前「どないして…」




『ふふっ……』


匡・八「……千代、さん?」




可笑しいじゃない。



決まりきった秩序が並ぶ世界で、こんな言葉が聞けるなら




あり得ない事だって




あり得そうじゃない?






それを



希望と呼ばず



期待と呼ばず





なんと言うの?



『……ありがとう。』



それを温いと握りつぶすならば




『貴方を……守ってあげる。』






スガヤ様?



私は






貴方を潰してみせましょう?


"
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ