infringe×前鬼

□隠れんぼ
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千代side



『お帰りなさい。』


前「………。」



庇翼院ですっかり私になれた子供達と遊んでいると



前鬼さんが私を迎えにやってきた。



私の"お帰りなさい"を聞いた彼は酷く呆れ顔で



前「ホンマ、別人みたいやな……」


と、呟く。



『onとoffの使い分けと言って?』



さっき、私が天狗の民を殺めようとしていた姿を彼は見ていたんだろう。



『んじゃ、帰ろうかしら。』


前「……おう。」



子供達に別れを告げてお屋敷を目指す。


やたら、寡黙な前鬼さん。



"剛にいちゃん"



と呼べば、民は私が夜叉だと気づかない。



『まったく……警戒してんのかどうか分かんないわね。』


前「……怯えとるんやろ。」


『危機感が足りないのよ。』



民の悪口じゃないの。



これは忠告。



"これさえしていれば"



なんて便利なもの、存在しないのよ。




前「なら、何でさっき仕事せんかった?」


『……仕事はするわよ。』



"仕事"は夜叉として抵抗をみせた天狗を殺す事。



『あれは……胸を借りた礼よ。』


前「千代……。」



次は、ないわよ?



『それでも、今日は郷を守れたんだから……良かったじゃない。』



"良かった"それは自分でも思ってた言葉。



『この場所を、前鬼さんは守りたいんでしょう?』


前「せやな……」



小さく笑みを見せてるつもりでも


作り笑いは下手なのね?



『明日にはどうなるかわからないけどね。』



それが今の貴方達の現実。



だから



『誇り高き天狗の力を見せてみてよ。』


前「………。」



そうじゃなきゃ


この地は滅びるだけよ?


私が



滅ぼすの。




そう話す私の横で



前「夜叉は好かんな……」



前鬼さんはポツリ、呟いた。


そんなん



『分かってるわよ。そんな物好き……』



いるわけない。


そう口を開きかけた時



前「でも、千代は好きやで?」


『………っ!?』



前鬼さんの真っ直ぐな視線に



胸を突かれた。



そうゆうんじゃないって分かってるけど



その直球にどう返せばいいのかわかんないのよ……




『……物好きね。』


前「そうか?」


『じゃなきゃ、ただのバカよ。』


前「なっ……」



だけど心が揺れるんだから



私も



どうかしてる……


ーーーーー
千代side



最近、どうも可笑しい……



前「千代?なんや?」


屋敷でだらだらする私と目が合って首を傾げる前鬼さん。



『なんでもない……』



何となく、彼が視界に入る回数が多くなった気がするのは



『派手な頭してるからかしら?』


前「……なんや急に失礼やな。」



まぁ、遣い魔だから一緒にいる時間も長いし……


それに



『なんなの?この静けさは……』



お屋敷でだらだらしてるのは


郷の民が大人しくしてくれているから。



太「匡様達のお陰です!!」

次「細かく巡回してますから!!」



『努力の賜物、ね……』



いつまで持つかしら?



三「千代〜遊ぼう!!」


太「こらっ!!三郎っ…」



『いいよいいよ、三郎くん。遊ぼうか!!』


前「千代は何しに来とるのかわからんな……」



そんな呆れなくたって、嘘を撒いてから約一週間。


郷は落ち着いてるから仕事がないのよ……


庇翼院と匡さんや八大さんからしたら、私はちょっとしたお客さん状態……



『匡さんもなかなかやるわね……』



私の呟きに



前「まぁ、やっと落ち着いたと思うたらこの騒ぎで姫さ、んとは………すまん。」


『………。』



中途半端に言葉を止める前鬼さん。



『別に、今更気にしちゃいないよ…』


前「そ、そか……」



貴方の胸を借りた日、散々泣いたらすっきりしたの。


美沙緒ちゃんもいい子だったし……



『あーぁー。美沙緒ちゃん次はいつ来るかなぁ?』



学校とゆう仕事が忙しいみたいで、なかなか郷に滞在しない美沙緒ちゃん。



前「なんや、もう姫さんと仲良うなったん?」



『んー…わかんない。』

前・3「………。」



仲良くって、どうなったら仲良くなの?



『でも、今度ジェラートってものを持ってきてくれるって……』



それは楽しみで興味がある。



前「千代……餌付けされとるやないか…」

『む。失礼な……』


三「千代〜遊ぼうってば〜」



あーはいはい。


そうでした。



『何して遊ぶ?』


三「鬼ごっこ!!!」



前・千代「…………。」




"鬼"ごっこ………?




私は既に鬼なんだけど



それより



『前鬼さん……』


前「なんや?」


『天狗の子供は毎日命懸けで遊ぶの?』



喰って喰って喰いまくる……みたいな。



『こ、怖……。』



固まる私に



前「んなわけあるか!!命幾つあっても足りんわ!!」



前鬼さんは全力で否定した。



『だってよくわかんないんだもん。』


前「子供の頃何してたん?」


『ん〜……』




記憶を振り返る。



『かくれんぼ……とか?』


前「屋敷で、か?怒られるで?」

三「前鬼どの〜少しだけ!!」

次「夜叉様と天狗の友好交流を深められます!!」



次郎くんは……青みたいに難しい言葉を使うのね……



前「しゃぁないなぁ……少しだけやで?」


3「わぁい!!」


『よし、じゃぁどっちにします?』



私の言葉に三つ子くんと前鬼さんは



前・3「……どっち?」



首を傾げた。



『見つかったら、鬼に目玉か舌を抜かれるでしょう?』


前・3「……っ!!?」



『どっちにします?』



当たり前の事を聞いたつもりだったのに



前「アホかぁーっ!!!」


『えっ!!?』



前鬼さんはまた全力で怒鳴り



3「ぁぁぁ……」



三つ子くんはカタカタと震えていた。





どうやら、天狗と夜叉では遊び方も異なるみたいね……。


"
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