infringe×前鬼

□まねっこ
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前鬼side



前「くっそ……。」



身体中ギシギシしとる……。



昨日やって来た千代っちゅう夜叉。



遠慮がないねんな……



薄茶の瞳に長い黒髪


色白の肌に華奢な身体で巫女さんのよな格好して



レポート一万枚



スクワット一万回



……鬼かっ!!(鬼やねんけどな。)



前「千代は……羽なくても翔べるんやな。」



俺の隣で空から街並みを見下ろしとる千代の背には羽は無い



まじまじ見つめる俺に



『羽……邪魔じゃない?』


前「………。」



千代はまじまじと俺の背を見つめ尋ねた。



前「お前なぁ……」


『遣い魔さん。私、鬼神ですよ?』


前「………っ!!」



俺、ホンマにこいつの遣いにならんといけんのか!?



前「あ〜…無比力夜叉様?」



仕方なく言い直したったら



『やっぱ、しっくりこないから普通に接して?』


前「………。」



コロッと意見を変えよる。


なんやねんコイツ……。



前「で?人間界はどや?」



もの珍しげにまじまじ観察して


そんなに興味深い、か?



『なんか……』



千代は



『ゴミのような人ゴミね。』



さらっと……



前「千代、お前なぁ。他に言い方あるやろ?」



『だってぇ……』



遠慮が、ないねんな……。


それでも何でやろ?



千代の雰囲気は



"鬼"って感じはせぇへんねん。



『これだけの人がいて……どれだけの人が分かり合えてるのかしら?』


前「は……?」


『分かり合えたフリしたって、フリでしかないのに……。』



なんや?いきなり……



前「………。」



そんなん……



前「当たり前やろ。フリはフリでしかないんや。」



そんなん知ってどーするん?



そう答えた俺に



『ふふっ。確かに……。』



初めてみせた千代の笑顔。



なんとなく



もう少し、その顔が見たいと思ってん。


ーーーーー
千代side



前「フリはフリでしかないんや。」



その言葉は


そりゃ当然で



『ふふっ。確かに……』



つい、笑った私に



前「千代は……アレやな。」



『え?』



前「折角可愛ぇぇ顔しとるんやから、もっと笑わな勿体無いで?」



『っな!?』



な、にを……


いきなり……。



『そんな事言っても罰は取り下げませんよっ!?』



動揺を隠そうとする私に



前「別にんな事考えとらん。思った事言うただけや。」



呆れ気味に両腕を頭に組んで……



好い人なんだろうけど



ド直球ストレート。



うん、苦手なタイプ……。



邪気がないのかな?



"フリはフリでしかないんや"



そりゃそうよ。



人のフリ見て人にはなれないの……




『私はどうかなぁ……?』


前「あ?」


『……何でもない。』



八大夜叉になろうと八大夜叉らしくフリ回ろうとして



立派な八大になれてる?



それに直球ストレート……



私にはとても無理だなぁ。



前「そろそろ戻る、か?」


『そうね……』



夕映えの空から


街を見下ろしながら



翼を器用に羽ばたかせる前鬼さん。



邪魔そうだなんて思ってないよ?



とても綺麗で羨ましい……



どうしてもっと



素直になれないんだろう?



虚勢ばかりはっちゃって



そんなんだから



想いの一つも言えないままなのよ。


ーーーーー
千代side


『…………。』



こういうタイプは、苦手じゃないな。



豊「……ん?」


『いえ……。』



紳士なフリして



豊「千代に見られると緊張するだろう?」



笑顔で分かりやすい嘘……。



って豊前さんに失礼か。




"可愛ぇぇ顔しとるんやから"


"思うた事言うただけや"



あれは、なんて返したらいいか分かんないから苦手。


なのに



『耳から離れない……。』



居間のテーブルに顎をついて呟くと



前「ん?なんや?」


『………。』



何でもないような顔で尋ねる彼。



『前鬼さんのせいでしょ!!』


前「は?」



これは、八つ当たり。



伯「千代さんは匡様と古いお知り合いなんですか?」


『ん?んー…』



知り合いってゆうか……



『拾ってもらったの。』


八「………?」


『子供の頃、家を一度追い出されて……。』



いく宛なく、天狗の屋敷でお世話になった。



相「それ程の事をしでかしたのですか?」



相模さんは、なかなか容赦ない言葉を素直に声にするなぁ……



『別に私は何もしてませんよ?』


そんなに悪い子じゃなかったもの。



『ただぁ、私父と愛人の間に出来た子供だったから…』



母の風当たりが強かったのよね……





私の言葉に


八「………………。」



口をつぐむ皆さん。



『あれっ?』


戸惑う私に



前「コメントに困るっちゅーねん。」



前鬼さんがポツリ。


いやいや、別にそんな重たい話じゃないのよ?



でも



『正直、母に喰われるかと思ったぁ〜!!』


あははって笑っても、皆さん静かにしてるけど



前鬼さんは、私の笑顔を楽しそうに見つめてた……



だから



そんな目で見ないでってば。


『一人娘だから、父には溺愛されてるもん。』



心配はいりませんよ?



『それより、匡さんは?』



次「姫様のおうちです!!」

三「お泊まりなの!!」



お泊まり、ね?



『お仕置きだってゆってるのに……』



ようやく結ばれた彼女とイチャイチャ……



まぁ仕方ないけれど。




スガヤ様はそんなに寛大ではないわよ?


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