infringe×前鬼

□まねっこ
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千代side


匡さんのお屋敷の居間。


八「………。」



頭を下げる天狗八大さん達。


『…………。』


その向こうに


匡「よう。」


頭を下げる気配すらない匡さんの姿。



『お久しぶりです。』



貴方は全然かわらないなぁ……



一応私、神の眷属だからね?



『……皆さんも、頭を上げて頂いて結構です。』



声をかけると、皆さん静かに顔を上げる。



匡「で?お前が来たのは何の用事だ?」



あまり喜ばしくない用事だけど



『八大夜叉として、天狗のお仕置きにきました。』



その言葉に


八「………っ!?」



固まる天狗の八大さんと



匡「千代が八大夜叉ぁ!?」


『…………。』



胡散臭いとでもいう顔で私を見る匡さん。



匡さん、今はそこじゃないですよ?



匡「何を襲名したんだ?」


『無比力(ムヒリキ)夜叉です。』



私の言葉に



匡・八「……っ!!?」



今度こそ



皆さん固まった。



そりゃそうか。




無比力夜叉の襲名は300年ぶりだもの。



300年空き続けたポストに就くなんて、私もびっくり。



匡「そうか……まぁ。千代は…アレ、だからな。」



考え深いように頷く匡さん。



『……えぇ。』



私が選ばれたのは、匡さんがいう"アレ"と言う私の体質にある……



けど。



『今はそこじゃないですってば。』



匡「なんだよお仕置きって……」



匡さんは渋々話を戻し



匡「お仕置きってなんかエロくねぇか?」


『………。』



ニヤリ、笑った。


相「匡様………」

前「ご当主……」




匡さんは



ほんっっと、昔と変わってないなぁ……。



『まず、仙果を手に入れた後の同族争い。』



我々、夜叉の使役が仙果を手に入れたかと思えば


その奪い合い……



『次に、八大天狗が郷を半壊させた事……スガヤ様は大層お怒りです。』


匡・八「………。」



八部族として恥じる事だと。



あぁ、そう。



『ついでに、私の遣い魔も差し出してくださいね?』


天狗を使役する我々



……そして八大夜叉の無比力を襲名した者は天狗の遣い魔一人の使役が許されている。



『まずは……郷を半壊させた荒くれ者はどなた?』



私の声に


前「俺や……。」



静かに手を上げたのは


『………。』




赤い髪の目付きの悪い男の人……。



怖そぅ……


とは、情けないから言わない。



『そ、ぅ……ですか。』



ついぎこちない敬語になりながら



負けじと



『では遣い魔……前鬼さんって方はどなた?』



凛と夜叉らしく振る舞う。


無比力夜叉の遣い魔は八大天狗の前鬼という役職についた者と決まっているの。



手を上げたのは……



前「………俺や。」


『ぇ………。』



赤い髪の目付きの悪い男の人……



ってか



『問題児が遣い魔ぁぁ!!?』


匡・八「………。」



ってゆーか、この怖そうな人が私の遣い魔!?



『ぜぇぇっったい嫌!!』

前「んなっ!?」




私が言うのもアレだけど


この人



鬼みたいだもの!!



前「俺かて好きで仕えるわけやない!!勘違いすなっ!!」


『はぁぁ!?』



おまけに失礼!!


そしてやっぱり怖い!!



『前鬼さん、貴方自分の立場が分かってないみたいね?』



私は夜叉。


貴方は天狗。


おまけに、私の遣い魔。



『さらに郷を半壊……』


前「……っ」



『貴方には罰として毘沙門天様の文献一万枚のレポートを出して頂きます!!』

前「はぁっ!?」



『……しかも、本日中。』



前「なっ……」



『そして。出来なかったら罰追加。』



前「………っ。」



追い込まれた彼は



ガタンッ!!

『……っ!?』



突然立ち上がり……



前「ぜぇぇっったい終わらしたるわっ!!」



威勢よく啖呵切って



バタンッ!!


『な……。』



居間を出ていった。



こ……怖…



呆然とする私に



匡「なかなかいいコンビじゃねぇか?」



匡さんはニヤリと笑った。


『……やめてよ。』



変な誤解を



貴方にされたら困る……。


ーーーーー
千代side


匡さんは


私の初恋……。



お庭では匡さんと仙果、美沙緒ちゃんが仲良くお散歩。



『二人は……仲が良いんですね。』



縁側からそれを眺める私に



太「はいっ!!」

伯「匡様と姫様はいつもあんな感じですよ。」



昨日からお屋敷にお世話になる事になった私に皆さん良くしてくださる。



前「ご当主っ…ホンマ、姫っさんにっ……ぞっこんやから、なっ…」


太・伯・千代「………。」



当然、レポート一万枚をかけなかった前鬼さん。



『余裕そうね?』


前「はっ……当たり、前っや。」



スクワット一万回の罰。



強がっちゃって……。



『ぞっこんって……』



でもまぁ。



昔からそうだったもの。



匡さんと出会った時



彼の瞳は既に美沙緒ちゃんを写してた……。



今更、わかりきった失恋に傷ついたりしない。



『前鬼さん。』


前「なんっや…」



イイ男が汗かきながら体を鍛える姿はなかなか素敵だけど……



『人間界みたいから早く終わらせて?』



前「無茶言うなっ!!」



そう言いながらも



前「くっそ……」



スピードを早める前鬼さん。



彼も彼等同様、好い人なんだろう。



それに本当は




私が貴方に罰を与える権利なんてないの……。


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