ぽかぽかフェチズム

□ぽかフェチ5
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前鬼side



風邪から完全快復した名無しさんちゃん



「パンダさんこっち向いて〜?」

『ん……?』


カシャッ


『…………?』

「可愛い!」

「本当だぁっ!」



すっかり、クラスのマスコット。


つか



前「名無しさんちゃん……パンダで振り向いてえぇの?」

『……おはよ。』


前「おはよぅさん。」



小柄な名無しさんちゃんがパンダのフードを被った姿は眼につき


わりと構内でも"三年生のパンダさん"として人気……



『ジャージ……』

前「ほいほい。」



いままでより……注目を集めてもうて、俺としてはおもろくない。


そんだけ、他の男からも視線を浴びるっちゅう事やろ?


ライバルが増えるのは喜べへんなぁ。



『……いちご牛乳は?』

前「ぁ……。」



忘れとった。



前「…………一緒に買いにいこか?」

ムゥ
『忘れたんだ……』


前「ちゃうちゃう。忘れてへんで?」

『…………。』



うわぁ。


パンダさん、むっちゃ不機嫌になってもた。



前「…………。」

なでなで

『……?』



撫でといたろ。


なんか可愛えぇから。



『いちご牛乳……』

前「はいはい、買いにいこな〜」



名無しさんちゃん……


わりとなついてくれとると思うんやけど



「パンダさんおはよ〜」

『……おはよ。』


前「…………。」



くるっ



『今の……』

前「……今のは他のクラスの奴や。覚えんでえぇよ。」

『ふぅん……』



アカン……


パンダ姿が広まりすぎて


ライバル急上昇や



『……あ!』

ビクッ
前「っ!?」



急にデカイ声を上げた名無しさんちゃん。


何かと思うたら



『いちご牛乳………売り切れ……』

前「ぁ……ホンマや。」



自販機のいちご牛乳のボタンには、売切の赤いランプが点灯


当たり前やけど


名無しさんちゃん以外にも、いちご牛乳飲むやつ居んねんなぁ


見かけた事あらへんけど。


いちご牛乳=名無しさんちゃん


俺の頭ん中でその公式が成り立ってもうててんなぁ。



前「名無しさんちゃん、どないする?」

『いちご牛乳がいい……』


前「そんなん言うても、売り切れやし。」

『……むぅ。』



あぁ……。


パンダさん、しょげてもた。



『……叩けば出てくる。』

前「は?んなわけ……」


バシバシバシ……


前「ちょっ、名無しさんちゃんっ!?」

『いちご牛乳〜っっ!!』


バシバシバシバシバシ……



前「こらっ!アカンって!」

ジタジタ
『むーっっ!』



自販機が可哀想やろっ!?


半狂乱のパンダさんを無理矢理自販機から引き剥がす。


どんだけ飲みたいねん。いちご牛乳……



前「しゃあないやん。他ので我慢しぃや?」

『…………。』


前「名無しさん?あんまムスッとすると買うたらんぞ?」

『…………じゃ、コーヒーブラックで。』

前「…………。」



一気に可愛くなくなってもたな……


ブラックコーヒー……。


なんか……名無しさんちゃんらしくないっちゅうか……



『ごぉくん?』

前「ん?あぁ、コーヒーな。」


チャリン

ピッ

……ガコン


前「……ほい。」

『…………。』



手渡したモンをまじっと見つめると


名無しさんちゃんは



『これ……違う。』

前「……。」



じっと俺を見上げた。



『これ……コーヒー牛乳。』

前「せやで?」


『私……ブラックコーヒー……』

前「コーヒー牛乳でえぇやん。」



やって


ブラックコーヒー……可愛くないねんもん。



『コーヒー牛乳……甘い……』

前「いちご牛乳も甘いやろ?」



むしろ、いちご牛乳のが甘いで?



ムスッ
『気分じゃない……』

前「……なら、要らんか。」


ひょいっ


『あっ……!?』

前「没収やな。」



あんましワガママ言う子にはやらん。


コーヒー牛乳を取り上げると



『返して!』

前「要らへんねんやろ?」



名無しさんちゃんは必死に取り返そうと手を伸ばす


……ちょっと苛めたろか。


コーヒー牛乳を高くあげる。



ピョンッ
『う〜』

スイッ
前「……。」

ピョンッ
『むーっっ!』

スイッ
前「…………。」



ぴょこぴょこジャンプするパンダさん


……可愛えぇ。


ニマニマしとると



『えいっ!』


ドカッ!!


前「ぐはっ……!?」



腹に重い衝撃……


思わず、廊下にうずくまる。



前「な……名無しさん、ちゃん?かはっ。」

『弱いものいじめ、だめ。』



うずくまる俺から名無しさんちゃんはコーヒー牛乳を脱却。


いや……弱ないで?


なかなかのパンチやったやん……



前「名無しさんちゃん……酷いわぁ。」

『ごぉくんが悪い。』


前「……。」



名無しさんちゃんは、たまに狂暴。


せやけど



『ごぉくん、行こ?』

前「……はいはい。」



"ごぉくん"


その響きについ許してまう俺は


きっと名無しさんちゃんに甘いんやろな。


いちご牛乳と、どっちが甘いやろ?




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