ぽかぽかフェチズム

□ぽかフェチ4
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名無しさんside



『こほっ……けほけほっ』


実「名無しさんちゃんっ!」

ビクッ
『っ!?』



風邪が治って学校に行くと


実沙緒ちゃんが抱きついてきた。



実「風邪治ってよかったぁ!」

『……ん。』



……柔らかくて、いい匂い。


ぎゅうっと抱きしめかせる。



キュゥンッ
実「……っ!」

『……こほっ。』



ぬくぬくして、気持ちいい……



A「お、復活したのか。」

『ん……』


A「暖房直ったから使っていいぞ。」

『……ん。』



Aくん……いつもは私が暖房あたりながら棚に転がるの嫌そうにするのに


……どうゆう風のふきまわし?


まぁ、オムライスの交換条件はまだ有効なはずだから……棚はありがたく使わせて貰おう。



女「あ、名無しさんちゃん!」

『……?』



クラスの女の子が声をかけてきた。


この子、ずっと同じクラスだな……


名前……


えぇと……



実「ユリちゃん、おはよー。」

ユ「実沙緒ちゃん、名無しさんちゃん、おはよー。」

『!』



そうだ、ユリちゃんだ……



『ユリちゃ……おはよう。』

ユ「風邪良くなってよかったぁ!」

『ん。咳……だけ。』



ユリちゃん……


ユリちゃん、ユリちゃん。


必死に頭の中で名前を繰り返す。


よし、インプット完了。



ユ「名無しさんちゃんにね、いいもの持ってきたよ!」

『いいもの……?』



いいもの……


なんだろう


いちご牛乳?



ユ「これっ!」

実「わぁ!可愛い!」


『……。』



いちご牛乳じゃ……なかった。



ーーーーー
前鬼side



朝教室に入る。


隣の席に、名無しさんは居らん。


せやけどそれは



前「……どないしたん。その格好。」



暖房がようあたる、棚の上に転がっとるからや。



『おはよ。』

前「おはよぅ……」



棚に転がる名無しさんは……


フリース素材のポンチョ


被ってるフードには、耳までついて



前「……それはパンダ、か?」

『ユリちゃん。』


前「は?」

『ユリちゃんが貸してくれた。』



ユリちゃん……あぁ、ずっと同じクラスやった子ぉやな。



『ユリちゃんが、暖かいからって。』

前「そか。」


『ユリちゃんが貸してくれた。』

前「…………。」



やけに……名前連呼するんやなぁ。


気のせいならえぇねんけど



前「名無しさんちゃん……もしかしてユリちゃんの名前……」

『っ!覚えたっ!さっき覚えたっ!』


前「…………。」



忘れてたんやな。


三年一緒のクラスやった、ユリちゃんの名前……



前「名無しさんちゃんは薄情やなぁ。」

『?』


前「三年も一緒やのに、ユリちゃんの名前も俺の名前も忘れてもうて……」

『……っ!』



俺……まだその傷が癒えてへん。


近づいたと思うたら、名前知らんとか言いよるし……



ムスッ
『も、覚えた。』

前「そーですかぁ。」


『ジャージ、貸して。』

前「…………嫌や。」

『っ!?』



ちょっと苛めたなってもうた。


やって、名前……ショックやってんもん。



『約束……』

前「…………。」


『嘘つき……嫌い。』

グサッ
前「…………っ」



名無しさんちゃん……


それでもさらに傷を負わすとは


……なかなかやりよるな。



シクシク
前「嫌や。絶対貸したらん。」

『っ!!!?』



それに……


パンダのポンチョ……よう似合うとるから、もう少し眺めとりたい。


棚から離れ、席に戻ろうとすると


たたたたたっ……


前「ん?」



後ろから小走りに近づく足音がし


……どんっ!


前「ぐはっ……!?」

「「…………!?」」



背中に、衝撃……


振り向けば



前「名無しさん……?」

『……。』



パンダの名無しさんちゃんが背中にしがみついとった。



前「…………。」

『…………。』



……可愛えぇ。


撫で回したい。



『……ごぉくん、ジャージ。』

前「っ!?」

ピクッ
「「…………っ!!!?」」



ぇ……え……っ!?



『ごぉくん、ジャージ!』

前「……っ」



剛くん……って……


か、可愛えぇっ……!!



前「…………。」


なでなで


『…………。』

前「…………。」


なでなでなでなで……


『ジャージは?』

ニコニコ
前「ん?貸したるで?」

ドヨッ
「「……っ(可愛いぃ!)」」



結局、名無しさんに負けてもうて


俺は御満悦でジャージを貸したった。


せやけど名無しさんはジャージの上からポンチョを重ね……



『ふぃ………ぽかぽか』

前「満足そやなぁ。」



棚の上、極楽とでも言うよな顔


まぁ、嬉しそならえぇけど。



『おはようなさい。』

前「…………。」



おはよぅ……なさい??


おはよぅか?おやすみか?どっちや?



前「もうすぐ先生くるで?」

『……寝たい』


前「名無しさん、いちご牛乳買うたろか?」

『起きる。』


前「ん、えぇ子。」



名無しさんちゃん……素直な子ぉやなぁ。



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