ぽかぽかフェチズム

□ぽかフェチ1
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前鬼side



名無しさんちゃんに出会うてから、今年で三年目。


今と同じよに


薄桃色した花びらが池にたまり


すっかり葉桜になった春の、寒さがまだ残った頃やった……



キーンコーンカーンコーン……


ザワザワ



前「…………。」



三年になって最初の席がえ


俺の隣になった女の子は、学校には来とるけど席にはおらず……


どこに居るかと思うたら


窓側に設置された棚から吹き出る温風の上に寝そべっとった。



前「名無しさんちゃん……おはようさん。」

『前鬼くん……おはょ。』



棚の上、スカートも気にせんとごろごろしとる名無しさんちゃんに話しかけた



前「なぁ……なにしとんの?」

『……。』



三年間、同じクラスやったけど


名無しさんちゃんとはあんまし喋った事はあらへん。


ただただ……


勝手に俺が眺めとっただけ。


せやけど、隣同士になったんや。これで仲良ぅなれるんちゃうか?



『暖房にあたってるの……。』

前「……せやろな。」



見たまんまや。


下から上に吹き出る温風の真上にゴロンと寝転がったまんま、俺が話しかけても身体を起こそうともせん。



A「おい……名無しさんちゃんがそこに居ると暖房あたらねんだけど。」

『……どかない。』



名無しさんちゃんが暖房を独占しとるから、傍のやつらは寒そうにしとる。



『こないだまで……私のだったのに……エアコン……。』


前「…………。」

A「お前のじゃねぇよ。」



たしかに、な?


こないだまで、Aが座っとる席は名無しさんちゃんの席やった。


今は席がえして、名無しさんちゃんの席はエアコンから離れ……俺の隣。



『はぁ……やだなぁ……』

グサッ
前「…………。」


『席がえしないかなぁ…』

グサッ
前「…………。」

A「しねぇよ。昨日したばっかりじゃねぇか。」



名無しさんちゃんの隣……俺は嬉しかってんけど……



前「ショックやなぁ……」

名無しさん・A「?」


グスッ
前「名無しさんちゃんは俺が嫌いなん?」

『え?』


グスッグスッ
前「そんなに俺の隣な嫌なん?」

アワアワ
『あ、ぃゃ……』



名無しさんちゃんは……やっぱし、嬉しそやないなぁ……


わかっててんけど


俺より、暖房のが好きみたいや。



『ぃゃ…えっと……嫌とかじゃあ…』

グスッ
前「……ホンマ?」


『ぅ、うん……』

前「ホンマやな?」


『ぇ……と……』

前「…………。」



俺のいじけた様子に困った様子の、名無しさんちゃん。



ハァ
前「黙ったっちゅう事は……やっぱし、嫌なんか……」

『え!?……いやっ』


前「いや、か……グスッ」

『ち、ちがっ……!』



わたわたと慌てとるなぁ……


なんっちゅうか


小動物みたいで、可愛えぇ。


余計苛めたくなってまうなぁ……



『嫌じゃない!』

前「……ホンマ?」


『う、うん!これから宜しくです!』

前「ん……」



名無しさんちゃんは必死に俺の機嫌を伺いながら、身体を起こした


素直な子やねんなぁ……



前「……なら、席戻ろなぁ?」


ひょいっ


『ぇ……わぁっ!?』

A「!?」



暖房の上を陣とった名無しさんちゃんを抱えあげる。


おーおー、びっくりして眼ぇまんまるになっとるなぁ



『ちょ、前鬼くんっ!?』

前「もーすぐHRやさかい。席戻ろな?」


『じ、自分で戻れるっ!』



俺に脇を抱えられながら宙ぶらりんの名無しさんちゃんの手足がジタバタと抵抗を見せるが……


気にせん。



前「ほれ、到着。」

ストン
『……。』



席に降ろされた名無しさんちゃんの顔は真っ赤で



「「あははははっ!」」

前・名無しさん「?」


A「お前ら親子かよっ!」

ガンッ
『っ!?』



クラスのやつらに笑われ


名無しさんちゃんの顔はさらに赤ぅなった。


可愛えぇなぁ……



『子供じゃないもんっ!』

前「せやでー?こんなでっかい子ぉ産んだ記憶あらへん。」


「「小さい子の間違いだろー」」

ガンッ
『っ!?』



お。名無しさんちゃん今……"小さい"っちゅう言葉に反応したな?



『ちっちゃいってゆぅなぁぁっ!』

前「……。」



なるほど、名無しさんちゃんはちっちゃいって言われるのがコンプレックスなんやな。



前「ほれほれ。もうすぐ先生がくるから名無しさんちゃん良い子にしぃやー?」

「「あははははっ!子供あつかい!」」


ガンッ
『っ!?』





ーーーーー
前鬼さんが"ちゃん"付け!!!?
しっくりこない(笑)
前鬼"くん"って!(笑)しっくりこない!

.
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