フェイク×前鬼

□私の選択肢
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名無しさんside



『う"〜〜ん……』


舞「………。」


『ぅう〜〜〜ん。』


舞「……ちょっと。」



舞と二人、居酒屋でお酒を飲んでも……
思い出すのは前鬼さんの黒い翼の事ばかり。



舞「何?更に元気ない……っていうか、唸って…」


『いや……』



なんて言ったらいいのか分かんない……



『あー……駄目だ。全然わっっかんない!!』


舞「うん、私のが分かんない。」


『頭の中がグシャグシャだ……』


舞「みたいだねぇ……。」



あの後、眠りについた私は夢を見た。


ずっとずっと忘れてた
記憶の、更に奥


いつの間にか忘れてしまった事。



『……取り合えず、呑もう!!』


舞「ちょっと。呑みすぎじゃない?」


『大丈夫だって!!』
















『やだっはなして!!』



届かなかった私の声



バタン、と重たい音が閉まるなり、その空間は真っ暗な闇に包まれた



『いやだっ!!』



全部分からなくなって


パニックになって



ドルン……



『……っ!!』



トラックのエンジンがかかって



もう駄目だ……



そう思いながら



『いやだっ……』



叫んだ無力な声。



その時



「大丈夫かっ!?」


『ぁ……』



閉ざされた扉が開いて



黒に光が差し込んだ……



「こっちに来い!!」



手を差し伸べてくれたその人の背中には



悪魔……



と言うには優美すぎる


黒い翼が生えてたんだ……。



その人に抱えられて私はトラックから逃げる事が出来たの。











そんな大切な事、どうして忘れてたのかな?



子供ながらに黒い翼は人間には無いものだって分かってたから?



その記憶は……前鬼さんの翼をみたから思い出せたのかなぁ?
警戒ばかりして辺りを探らなくても、最後まで覚えてれば……



こんなに怯えて生きなくても良かったかも知れないのに……




『すいませーん!!生ください!』


舞「ちょっと?呑みすぎなんじゃ……」


『いいじゃん。久しぶりだし〜付き合って!!』


舞「もぅ……」



あの翼は……昨日私が見た、大好きな人の背中にあったものと同じ……なの?



ーーーーー
前鬼side



名無しさんは、見てもうた。
俺も……誤魔化す事は難しいと思ったから正直に言ったんや。


けど……


思い出してしまったやろか?



過去の記憶を。



前「……何してんねんっ。」



悔しさから、部屋の畳を拳で叩きつけた。



アイツが……名無しさんが思い出してしまったら、記憶を消さなアカンやないか!!
結局、守りたい言うて……俺が壊すんか?



ヴーヴー……


前「………。」



手元の携帯が振るえ、視線を移す。


誰からか、は
大体分かっとんねん……


二件しか登録しとらんからな。
潜入用に用意した携帯
登録は店の電話番号と……


ヴーヴーヴー…

前「……名無しさん」



画面には、昨日俺が自分の正体を告げた相手の名前……



ヴーヴー…


前「………。」



いっそ、アイツが苦しむなら嫌な記憶なんて消してやった方がえぇんか?

でもそれは……


本人に確認せんと……
俺には出来ん。



ピッ……


前「……なんや?」



天狗を理解出来ずとも、あれが人間のもつモンやないと……あの翼を見て分かったやろ?


それを確かめようと、電話に出た。



「もっしもーし!!」


前「………。」


「もしもしぃ?私、名無しさんちゃん。」


前「………誰や。」



明らかに声も違うしな。
名無しさんはそんな名乗りかたはせん。



舞「舞でーす。バレちゃった?」


前「バレるやろ。」



全然似とらん。
むしろ似せる気もなかったやろ。



前「で?なんで舞が名無しさんの携帯持ってるん?」


舞「それが……」



舞は、さっきまでとうって変わって焦ったよに言葉を吐いた……



舞「名無しさんが、大変なのっ!!どうしようっ!!前鬼さん、早く来てっ!!」


前「名無しさんが……っ!?」



やっぱし、思い出したんかっ!?
倉庫で暗闇に怯えてた名無しさんの姿が脳裏に浮かぶ……



前「待っとれ。今行く……っ」



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