フェイク×前鬼

□彼は嘘を言わないの
1ページ/3ページ

名無しさんside



あの言葉に、ようやく想いが通じてたって分かったのに


何故か


前鬼さんが遠くへ行ってしまう感覚が消えない……





舞「どうした?元気ないね?」

『……そんな事ないよ?』



休憩室、いつも通りのメンバー



舞「そんな風には見えないけど……ねぇ?前鬼さん。」


前「……どやろな。」


舞「………。」



三人の休憩室は、確実に何かが違った。



『………。』



前鬼さん、嘘がつけない人だから……

昨日の話も嘘じゃなかったんだろうな。
本当に、この場所から居なくなってしまうかもしれない。



前「……店長に話があるから先行くわ。」


舞・名無しさん「………。」



別に、二度と会えない訳じゃないのに。
……会えない気がして。



舞「……前鬼さんとなんかあったの?」


『ん〜……』



休憩室を出ていった前鬼さんと私の様子に舞が気づくのは、あからさまに空気か沈んでたからで……



舞「もしかして、前鬼さんフッた?」


『ぇ……』



"名無しさんが好きやで"


あの言葉に、前鬼さんは返事を求めてるのかな?
私にはそんなふうには思えなかったけど



『……って。なんで知ってるの!?』


舞「フッたのっ!!?」


『いやいやっ!!フッてないよっ!!』


舞「……じゃあ、告白かぁ。」



舞の鋭さは、どこからくるんだろう?



『なんか……よく分かんなくて。逆にフラれた気分。』


舞「………。」



なんて急に辞めるなんて言い出したんだろう?私が何かしちゃったかな……?

いや。思い当たる節がありすぎるな。



『あー……全然分かんないっ!!』


舞「あれだね。久々に飲みにでも行く?」


『ん〜……行く。』


舞「前鬼さんも誘おう!!」



それは……どうかな?
ってゆうか、来ないんじゃ……



舞「悩んでても始まらないよ?」


『ん〜……』



始まるどころか、終わる気がする……


うんうん唸る私と舞、二人きりの休憩室に



り「フォローお願いしますっ!!」



舞・名無しさん「………。」



りかさんの高い声がインカムから響く。

これは……



『なんかあったね……』


舞「行きますか。」



何があったか分からないインカムに、舞と二人で駆け付ける。



フロアでは、そこにお客様の視線が集まっていたからすぐに場所は見つけ出せたけれど……



「この人に身体触られたんですけどぉ!!」

「どーなってんだこの店はよぉ!」



大きな声で叫ぶカップルのお客様の男性は、以前見たことがあった……


前にお酒飲んで暴れてた人……
警察に店長が連れていって出禁になったんじゃなかったの?



舞「お客様失礼しますっ!」

『……どうなさいましたか?』



カップルに絡まれていたのは!りかさんじゃなくて……



前「……勘違いすな。」


舞・名無しさん「………。」



前鬼さんだった。



舞「お話伺えますか?」


「こいつが人の女の身体触ったんだよ。」

「急に触られましたぁ〜」



人目気にせず声を張り上げるカップル。



『身体を触ったって……』

舞「前鬼さん、本当?」


前「転びそうやったから、支えたっただけや。」



それはつまり、女性の身体に触れてしまったって事になるな……



『りかさん、店長呼んだ?』

り「インカム繋がらなくて……」



触れてしまったからには、私達は何も言えないけど……



「ちょっと。ここのお店はスタッフが客に手ぇだすの?」

「警察に連れてこうぜっ」


前「そっちが倒れてきたんやないかっ!」

舞「前鬼さん、落ち着いて……」



何も言えないって分かってても



「セクハラじゃね?」

「ひっどーい!」


前「誰がセクハラするかっ!」

『……っ。』



なんか、悔しくて……



『うちのスタッフはそんな事致しません。』


前「………」

舞・り「………。」



黙っていられなかった。

だって……
前鬼さんはそんな事するような人じゃないのに。



「……んだと、コラ。」


『責任者が来るまでお待ち下さい。フロアの監視カメラを確認致します。』


「客の行ってる事疑うわけ?」


『そういう訳では……』



でもこれじゃ……。

わざわざ出禁になったお店に入って、騒いで……いつかの仕返しに来てるみたいじゃない。



「お前……こないだのスタッフだよな。」


『えぇ。』



ズイッと私の前に歩みでた男性に睨まれて、怖くない訳じゃないけど……


前鬼さんを疑う事なんかできない。



前「……名無しさんは関係ないやろ。」

『前鬼さん……。』



私と男性の間に割って入った前鬼さん。
あの時の光景を思い出した時……




バキッ……


前「……っ」

舞・り・名無しさん「……っ!!?」



鈍い音が前鬼さんの頬に傷を負わせた……


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ