フェイク×前鬼

□彼と珈琲とチャイム
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名無しさんside



このゲームセンターでどれだけの電球が使われているのかわからないけれど……


電気が切断された今は


ただの大きな闇の塊になった



前「ホンマに大丈夫なんやな!?」


『ん……。』



少しずつ目が慣れてきたし……


非常灯の灯りがせめてもの救い



『……ふぅ。』


前「……。」



大きく深呼吸……



『よし。戦いますかっ……!!』



何一つ動かなくなった店内。
自分達が動くしかない……電気が復旧したら、強制終了したマシンのエラー、クレームが待ってる。



前「大丈夫なんやな?」


『やるしかないでしょう……?私はカッコ悪い自分が嫌いなんだもの。』


前「……ん。そか。」



繋いでいた手が離されて
そりゃ心細いけど……


楽しくなくても、一生懸命頑張ってれば……山崎のおばぁちゃんも、きっとどこかで目を細めて笑ってくれるよね?



『行きますかっ!!』


前「おぅ。」



ーーーーー
名無しさんside



人間の文明がどれだけ進化して便利になっても、それが無くなってしまったら


頼りになるのは


人の強さしかないでしょう。



いつまでも闇に震えている程、人は弱くないと



自分もそうでありたい、と



願うなら、自分を信じるしかない。



大丈夫と何度も繰り返してた言葉は、前鬼さんがくれる言葉より力は持たないかもしれないけれど



戦い抜く勇気が持てれば



その嘘も



誓いに変わるでしょう?




『動かずその場でお待ち下さい!!』



広いフロア、声を張り上げて走る



前「動いたら危ないで!!」



駆け付けたフロア、インカムが使えないからか地下一階から地上三階の四フロアを走り回るスタッフ



『フォローします!』


り「あ、名無しさんさん……!!」

前「川さんは?」

り「今地下に居る店長に確認しにいった…」



この停電が長びくのか……
一時的なものなのか……



「ちょっと……どうなってんの?」

「まだつかないの?」


前・り・名無しさん「……。」



お客様も苛立ち始めてる……



『申し訳ございません、只今確認いたしておりますので……』


り「すみません、少々お待ち下さい…」


「ずっと待ってるんだけど!」



一人騒ぎ始めれば



「俺なんか当たってる最中だったんだけど!」

「ねぇ、どうなってんの?」

「保障してくれるの?」

「もう帰りたいんだけど。」



次々に波紋が広がる……



『お帰りになるお客様!!メダルはこちらでお預かりします!』


前「えぇの?」

り「マシンが動かないから枚数計れないよ?」



電気がないって……
こんなに不便だったのか。



『お客様のカードと遊んでたマシンを聴いて、分けといて?』


り「うん、わかった…」


『前鬼さんは、お帰りになるお客様が遊んでたマシンをチェックしてメダル入れる場所を塞いで』


前「おぅ……」



フォローに入っても、人手が足りなすぎるな……川さん、他のフロアで掴まってるのかも……



『りかさんのフォローは私が入るよ。』

前「おう……」



川さんが戻るまで持ちこたえなきゃ……



り「カウンターはりかだけでいいよ。」


前・名無しさん「え……?」



りかさんの言葉に、二人で動きを止めた。



り「フロアもお客様居るし……前鬼さんと名無しさんさん二人でフロア回った方が早いでしょ?」


前「せやけど……カウンター凄いお客さん来とるで?」


り「大丈夫っ!!」


『………。』



そうか……



『前鬼さん、りかさんに任せてフロア回ろう!!』


前「本気か?」


『……りかさんが大丈夫って言った言葉を信じたい。』


前「名無しさん……」



私より先輩。
カウンターだって、アクシデントならりかさんの方が経験してるだろうし……



『りかさんが言うんだから。大丈夫でしょ?りかさん。』


り「……っうん!!」


『ん。お願いしますっ!!』



りかさんがしっかり頷いてくれたから
躊躇わずに、フロアに向かえる。


そうだよ


戦ってるのは、自分だけじゃなかった……皆いるんだ。


この瞬間を乗り越えようと、今皆が戦ってるなら……チームを信じて戦った方が越えられる壁は高いんじゃないかな?



『……っ。』



大丈夫。



足が震えるのは……



武者震いなんじゃない?

そう思えれば



こんな生き甲斐ある戦場はないでしょ?



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