フェイク×前鬼

□チョコは甘い?苦い?
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名無しさんside



いつかの物置倉庫。



『………。』

前「えげつな……」



前鬼さんと二人、積み上げられたゴミ袋を見上げる……

店長の機嫌とるようなインカムが聞こえた時点でなんかあるんだろうとは思ってたけれど……



『果てしない……』



なぜ、ゴミ袋を見上げているかと言いますと。

ゴミ袋に入ってるのは、ゴミではなくて。立派な商品で……そのチェックを頼まれたからなのです。


そのチェックを頼まれた商品、何かと言いますと……チ○ルチョコレート。


UFOキャッチャーコーナーで皆さん一度は見たことがあるはず……



前「これ……全部、か?」

『そうみたいだね……』



ゴミ袋に取り合えず、と詰め込まれたチョコレートのひとつひとつ賞味期限のチェックを命じられた私達……

チョコの数に、どん引きです。



前「しゃぁない、やるか……」


『うん……』



腕を捲った前鬼さんの隣で分別をはじめる……これはなかなか時間かかるわね。



前「こんだけあると食う気も失せるな……」


『前鬼さん、食っちゃだめだからね?』



商品ですから。


他愛ない話をしながら、チェックを始める。うん万個という果てしないチョコの検品……


チラッと隣を見ると、前鬼さんの腕が視界に入る。



『………。』



私より逞しい腕。

メダルや、私まで楽々と抱えてしまえる男の人って感じの腕……


なんか。


ドキドキしてきた……。



前「名無しさん?」


『………。』



そういえば、この倉庫……


前鬼さんに抱き締められたんだっけ。
着ぐるみにキスしてたな……


うーん。


前鬼さんと二人きり、か……



『……っ。』



やば。緊張してきた……!!



前「名無しさん!!」


『わぁっ!?』



前鬼さんの声にビクッと反応する。



『な、なに?』


前「……ソレ、アカンのちゃう?」


『へ……?』



指差された先には



『あぁっ……!?』



ぎゅうっと握って溶けてしまっているチョコレート……



『し、しまった……』


前「なにしとんのや。」


『うぅ。ごめんなさい。』



つい、色々考え過ぎてしまって……
可笑しいなぁ。

危うく、思考がエロに進むところだった……



前「ソレもう店出せんやろ?」


『うん……怒られちゃうかな?』


前「……証拠消してまえばえぇんちゃう?」



証拠を……消す?



前「貸してみ?」


『ぅ、うん?』



言われるままチョコを渡すと、前鬼さんは溶けかけたチョコが滲んでるラッピングを丁寧にほどいて……



前「ほれ。口開けろ。」


『ぇ……っ!?』



チョコを口元に差し出した。



『食べちゃだめだよ……』


前「バレへんよ。捨てるのも勿体無いやんか。ほれ。」


『ぅ……。』



それ以上に……


"あーん"が、恥ずかしいんですってば。



『ぜ、前鬼さん食べていいよ?』


前「罪を人に擦り付けるつもりか?」


『いや……そうじゃな…むぐっ!?』



無理矢理、チョコを私の口に突っ込んだ前鬼さん。口の中に甘さがトロっと広がってく……



前「はよ食わんから……俺の指までチョコついてもうたやん。」


『ぅ。ごめ……なんか拭くもの……』



自分の手についたチョコで制服が汚れないように気を付けながらティッシュを取り出す。



『前鬼さん、コレ使っ……』



前鬼さんは差し出したティッシュを受け取らずに




ペロッ……



『……!?』



自分の指についたチョコを舐めた。



『な、何してっ!?』


前「こっちのが早いやん。」


『ぁ、いや…そう、だけどっ』


前「顔……赤いで?」



だってその指、一瞬私の口に……っ!!



前「名無しさんの指にもついとるな。」

『……っ。わ、私は大丈夫!!』



慌てて、自分の手をティッシュで拭く。



『……っ。』



どうやら



私よりエロいのは彼の方でした……。



ーーーーー
名無しさんside



終わらないチョコのチェックを黙々と進めても、さすがに二時間もやると苦行に……



『あ〜!!ダメだ。終わりが見えない。』

前「まだ一袋目やしなぁ……」


『あーやだ。もーやだ。』

前「俺だってイヤや。」



……ですよね。



『休憩っ……!!』



ボスッと後ろに倒れると
ゴミ袋に入ったチ○ルの袋がクッションに……

中に入ったチョコの角が背中にチクチク刺さって……痛い。



『クッション失格だな……』


前「なんの話や。つか、また溶けるで?」


『あ、そっか……』



よっこいしょ、とゴミ袋から身体を退かすと



前「……っ、名無しさんっ!!」


『え……?』



焦ったような前鬼さんが



『えっ。』



私に被さってきた……



どきっと心臓が跳ねて





ザザザザザザザァァ……




前・名無しさん「…………っ。」



積み上げられたゴミ袋が崩れ
雪崩のようにチョコが降ってきた……


チョコの角が当たって



『痛た……』


前「お前、何し……」



そりゃぁ、前鬼さんに怒られるのも同然で……



だけど



私の上に被さった前鬼さんと



『ぁ……』


前「………」



目があって、固まってしまう。



その、近さに……



前「………。」


『……ぇ。』



ゆっくり降りてくる前鬼さんの顔。
瞳から視線がそらせない



その唇が額に触れたとき



『……っ。』



身体が震えた私に



前「……すまん。」



小さく呟いた声が聞こえた……



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