フェイク×前鬼

□人形は負けず嫌いでした
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前鬼side



舞「お疲れ!!」


前「おぅ。どしたん?」



仕事上がり、関係者出入口の前に突っ立っとる舞。

傍に、名無しさんが居らん……



舞「ちゃんとしたお礼しようと思って!!」


前「まぁた、ソレか……」



ニヤニヤ笑うとる舞。
こいつが言うと、嫌な予感しかせんなぁ……



前「礼されるような事してへん。」


舞「名無しさんの為、だもんね?」


前「……。」



こいつは……



前「とにかく、礼は要らん!!」


舞「まぁまぁ、そう言わずに〜」


前「舞が言うと嫌な予感しかせぇへんもん。」


舞「確かにいい事、じゃないかもねぇ……」



いい事じゃない、って……
そんな中途半端に言われると逆に気になるやんか。



前「なんやねん。」


舞「名無しさん、柳くんの告白の返事に行ったわよ?」


前「………。」



ホレ見ろ

嫌な予感、当たったやんか。



舞「名無しさん、何て応えるのかなぁ?」


前「……知るか。」


舞「あれ?前鬼さんも見てるだけで満足なの?」



舞の言葉に足を止める。
その言葉に、覚えがあったからや



舞「思ってるだけで、名無しさんに伝わってるとは思えないけどなぁ?」


前「……お前」



なかなかえぇ度胸やな。













……んで、結局



前「……なぁ。」



舞にのせられて、公園に来てもうた。
気になったんや…しゃあないやん



前「柳になんて返事したん?」


『……気になります?』


前「………。」



冗談ぽく笑ってみせた、名無しさん。
気になったからここに居るんや



前「……いけんか?」


『………。』



その、少しの間が気になって……



『断りましたよ。』



その言葉に



前「そ、か……」



ホッとしてん。


この、悶々とした感情……
いつぶりやろな?


こんな気持ちになる位や



もぅ手遅れやねん。



前「名無しさんは……好きな奴居らんの?」



『ふふっ。どうでしょう?』



その返事はどっちや?



前「なんやそれ……」


『でも……』


前「ん?」


『そのうち、わかるかもね?』



オレンジに照らされたその笑みが、妙に綺麗で……



前「……俺やったらえぇな。」


『え?』


前「名無しさんの相手。」


『……っ!?』



ポロっと口走っててん……



ーーーーー
名無しさんside



あながち、この世界は捨てたもんじゃない


……そう気づいても。



案外素晴らしいかも


……そう思えても。



『りかさん……』


り「一生懸命……やったんだ、よ?」



ただ時間に流されて待ってるだけじゃ
求めるものも、その世界も、なかなか訪れない事がわかった。



りかさんとカウンターを引き継ぐと、壊滅的な状態……



り「立て直そうとしたんだけど……」


『……出来なかった、と。』

前「………。」



さすがの前鬼さんも呆れ顔。

だって、メダルゲームのカウンターなのにメダルのストックが無い……って、ありえます?



『それを踏まえて、なにか他に言葉は?』

り「……ごめんなさぃ。」


『うん……。』



まぁ……いつまでもこんな事言ってても仕方ないし



『メダル運びながらカウンターやるから、休憩行っていいよ?』

り「えっ!?大丈夫?」


『いや……』



大丈夫じゃないけど……



『仕方ない、よ……』

り「………。」



諦めじゃなく、譲歩……のつもりが



り「どうせ、りかは名無しさんさんみたいにはできないよ。」


前・名無しさん「………。」



それは、彼女の何かを傷つけてしまったみたいで……りかさんはあからさまに不機嫌に……



『いや……私も大丈夫じゃないよ?』


り「でも、いつも巧くやるじゃん!!りかには出来ない!!」


『いや……だってこの場合、仕方な…』


り「りかの方が先輩なのに……名無しさんさんは器用でいいね!!」



りかさんの口癖……
聞き慣れてない訳じゃないけど



『……なら、努力するしかないじゃない。』


り「………。」



認められる努力もしないで、ただ認められたいって言うのは無理な我が儘で…

そう思う事は変わらない。
だから私も……努力して自分を認めて貰えるようにしなくちゃ。



り「名無しさんさんは……フロアが多いから…りかはカウンターばっかりだし……」

『……なら、フロア出たいって頼んでみなよ。』


り「……名無しさんさんには分かんないんだよ。」


前・名無しさん「………。」



いつもニコニコしてるりかさんが、ここまで言うとは……



前「……取り合えず、休憩なんちゃう?」



私とりかさんの言い合いを眺めていた前鬼さんが、渋々仲裁に入る



り「うん。……行ってくる。」

『……行ってらっしゃい。』



俯いてカウンターを出ていったりかさん。
彼女は毎度のこのやりとりをどう思ってるんだろう?



『言い過ぎ、だった?』

前「………。」



前鬼さんに尋ねると、彼は髪を掻きながら呟いた



前「男より、女同士の喧嘩のがえげつないわ……」


『………。』



ふむ。どうやらこの様子は前鬼さん、本当に女の子同士の揉め事が嫌なんだろうな……


えげつない、って事は……
やっぱり言い過ぎだったのかなぁ?



『……取り合えず、引き継ぎ確認教えるね。』


前「おぅ。」


『まずは……』



前鬼さんも徐々に仕事を覚え、私達に追い付いてきてる……


りかさんは……



このままでいいのかな?




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