フェイク×前鬼

□簡単でしょう?
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名無しさんside



眠れない夜が増える



何かが身体を蝕んで、空っぽみたいに軽い心に重たい身体が妙にアンバランス



深夜、手にした薬は今日何度目のものだろう?


薬を飲めば、私も皆と同じ生活ができる?


身体が重たいのは、ただの、薬の副作用で胸が痛まないならそれでいい


この世界で生きるなら仕方ない


汚れたのが世界でも自分でも、どっちでもいい


汚れていることに変わりはないでしょう?


出口も解放も望んだって
誰も救ってくれない事が分かってるのに、いつまで願っても仕方がない


逆らえない流れに、逆らえないのに抵抗する必要なんてない


嫌いな自分が沢山いても
自分を見てる人がいないんだからバレやしない


そんな自分を気にしても仕方ない



素晴らしく下らない日々を上手くやり過ごせれば苦労しないで済む



ねぇ?それは




私だけですか?




そんな事ないでしょう?




貴方はどうですか?




心の隅に、居るでしょう?





私と同じ貴方が。




朝起きて戦って夜眠る



朝が来て夜が来て、それをただ繰り返す



ただ、それだけの事



『………ゴクッ。』



水で薬を流し込んだ音で



AM3:00をお知らせします。



ーーーーー
前鬼side



好きでいるだけなら、俺の自由やろ?



『おはよう〜!!早いね?』


前「名無しさん……」



朝、店の前で声を掛けてきた名無しさん。
にこにこ笑うて……

自然すぎる笑顔。


最近……こいつ、可笑しい気がすんねん。



『あ、シフト今日までだからね?』


前「……おう。」



いつも通りかと思えば



舞「二人とも、おはよう〜!!」


前「舞……おはようさん」

『おはよーっ!!』



笑顔で挨拶を交わして



『私シフト作らなきゃだから先行くね〜!!』


前「おぅ……」

舞「また後でね〜」



大した話もせず、さっさと去っていく。
俺の勘違いならええねんけど……
名無しさんと舞は、仲良かったんちゃうんか?



舞「……気になる?」


前「は……?」



舞の声に振り返ると、ニマニマと豊前のよに気味悪い笑みを見せとる舞



舞「名無しさんの背中ずっと見てるから。」


前「はっ……!?」


舞「好きなんじゃないの?名無しさんの事。」


前「んなっ……!!?」



なんやコイツ……
言う事まで豊前そっくりやんか……!!



前「……なんの事や。」


舞「名無しさんまだ柳くんに返事してないみたいよ?」


前「そうなん?」


舞「仲良さそうに話しちゃいるけどねぇ……どうなる事やら。」



腕を組んで、名無しさんが去ってった方向を見つめる舞は心配しとるんやろか?
それとも興味、か……?



前「……名無しさんなら上手く、やりそうか?」


舞「……ぇ?」


前「別に聞くつもりは無かったんやけど……舞がりかと話してた事やろ?」


舞「………。」



あん時、名無しさんも隣に居たとは言わん。女同士の揉め事程、面倒な事はあらへんしな?



舞「名無しさんは不器用な子よ?」


前「は……?」


舞「でも、名無しさんがそれを隠したがってんなら……わざわざ暴く必要ないよ。」


前「……なんや。」



そういう事かいな。



前「舞は名無しさんが好きなんやな。」


舞「んー?前鬼さんが名無しさんを想う好き、とは違うけどね?」


前「なっ……!!」



コイツ……からかっとるなっ!?



舞「……少なくとも、私は友達だと思ってるんだけど、な。」


前「………。」



寂しげに遠くを見た舞は、名無しさんの変化に気づいとるようやった



見渡せば、足元にも色んなモンが転がっとるのに……今の名無しさんにはそれは見えとらんのやろか?



前「……思っとるだけで満足ならええな?」


舞「え?」


前「思っとるだけなら、相手には真っ直ぐは伝わらんけどな。」


舞「………。」




なんて、舞には偉そうな事言うたが……



それは俺も同じやな。
俺はそれで満足せなアカンのに、求めてまう。



傍に居たいと願えば、願うほど

名無しさんへ想いが向く程、どっかで臆病になってまう



本当は、名無しさんは天狗を覚えとらんのやなく、嫌やったから記憶から天狗だけ消してまったんやないか……?て。




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