フェイク×前鬼

□クーリングオフは出口ですか?
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名無しさんside



素晴らしい日々ってなんでしょう?



『ん〜……。』



もし、私に人並み外れた力があったとしたら……何か変わっていたかしら?
薬をのんで、ベッドに転がりながら携帯小説を暇潰しに覗く。


読んでる間は夢中になったり考えたりするけど……私には誰かを守れる力もないし、この世界が本当に素敵なものだ!!

とは思えそうにはない……。


日常という戦場で戦ってるのに、これ以上何に立ち向かえと……?



見渡せば、私の周りにも素敵な何かが転がっているのかな?



『ん〜……。』



素晴らしき世界は……
私には簡単には訪れそうにない……?


携帯サイトを閉じて、布団に潜る。



『ぃぃなぁ〜……。』



そんな日常があったら、こんな薬も飲まなくて済む?もっと自分に自信が持てる?



『でも、なぁ……。』



期待には失望がつきものでしょう?

失望に負けずに、何かを信じきれる自信はないなぁ……なんてボヤいてるうちは、私には訪れないだろうな……



素晴らしき世界は。



『寝ますか……。』



その日


私は何故か前鬼さんの夢を見た……。



自動販売機に照らされた綺麗な彼の横顔と、私を呼ぶ彼の声。


それに妙に胸があたたかくなったの。




ーーーーー
名無しさんside



柳「ほんっっとに、すいませんでした!!」

『………。』



朝、フロア出る前に休憩室で頭を下げる柳くん。



『ぃ、いやいや……頭上げて!!?』


柳「俺、自分で言い出したのに……」



シフトに穴を空けてしまった事に責任を感じて頭を下げてくれる柳くん。



『も、もぅいいから!!ねっ!?』

柳「いや、でもっ……」


「「………。」」



スタッフの視線が集まる中、頭を下げる柳くん。下げられ続ける私……

これじゃ……



り「名無しさんさん、そこまで怒らなくても……」

川「自分も……すいません。」


『いやぃゃ……』



これじゃ、本当に私が怒ってるみたいじゃないっ……!!?



『お願いだから頭上げて!!』

柳「いやっ……」



全然収拾つかないなっ……
誰かに助け……



『………。』



休憩室を見渡す。
こういう時は大体、舞……に……


いつも通り、何事もないように振る舞ってしまえば……



でも。



『……行こう。仕事始まる。』


舞「………。」



私は笑顔で俯いて
舞に背を向けて休憩室をでた……。


嘘を飾ってるくせに、
他人の嘘は要らない。なんて我が儘ですか?


そんな事も上手くやれないのはきっと、私が疲れてるからかな?
戦場から、この窮屈な日常から解放されたい。


"休みをください。"それは誰に頼めば解放されますか……?




ーーーーー
名無しさんside



多くの人が前向きに、と俯きながら時間が流れていく世界で


人との関わりが断てない社会で
私達は複雑に絡み合いながら、絡まって、結び目が出来ないように距離を空ける……



本当に素晴らしいモノとはなんですか?
貴方は見つけられましたか?



理想と現実に出来た距離は
例え交差しても、再び点から離れていく……
少なくとも、私の周りに用意された世界はそういう場所。


こんな世界なら要らないのに……望んじゃいないのに。
そう思う事すらあります。



店「本当にしっかりしてよ!!二人だけの問題じゃないんだからね?」



事務所で携帯いじって箱の外へは出てこない、大層偉そうな指揮官様はその社会でどれくらいの位置から


私を見下ろしているんだろう?



前「すんません。」

店「頼むよ、本当。」


『………。』



今日は何にお怒りかと言えば……
本部研修の用意が進んでいないから。

一言一句、マニュアルを間違えずに口にさせたい指揮官様。



店「明日だよ?大丈夫?」



本心は、自分の評価に関わる事を気にしてるんだろうな……私の中で少し遠くにいる自分が囁いた。



店「名無しさんさんも。先輩なんだからしっかり指導してくれないと。」


前「いや、名無しさんは悪ないねん。」

『………。』



素晴らしいらしい世界。
少しずつ歯車が狂っていく。



店「名無しさんさん、聞いてるの?」


『………出来るんですか?』



頼んでもいないのに
用意された世界で生きる事は、非常に困難で……



店「なにが?」

前「名無しさん……?」



言ってはいけない。
仕方ない。

そう知りつつ



『なら、店長にはマニュアル100ページ一言一句間違えずに言えるんですか?』


店「………。」

前「………。」



口にしてしまった本音。

自分に出来ないくせに人にやれと、声高らかに叫ぶ貴方には



『店長には出来るんですよね?』


前「……名無しさん、落ち着け。」



だって、そうでしょう?
私間違ってないでしょう?

貴方の評価の為に私はいるんじゃない。
自分のドロドロしたものが表に出てしまった瞬間。



店「……ヤル気あんの?」


『………。』



こんなものを望んだわけじゃないのに。
現実が汚れ過ぎてて嫌になる。



『すいません、覚えてきます。』


店「……休憩室使って。」

『はい。』



この窮屈な檻の出口を探し続けていても、見つからない。



店「名無しさんさん、疲れてんの?少し可笑しいよ。いつもなら……」

『………。』



オカゲサマ、で。

いつもの"名無しさんさん"なら……?



『すいませんでした。失礼します。』



前鬼さんと事務所を出る間際、店長の言葉に頭を下げて発したコトバ


そう、これだって



最も適した選択肢。


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