infringe×前鬼

□救い
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前鬼side



自分が斬った夜叉当主…千代の母親の前にペタッっと座り込む千代。



『次の世界が…やってくる……』



涙を流しながら空を見上げ


力なく、地面に転がった……



前「千代っ!!」


匡「三つ子と伯耆は手当ての準備だっ!!」

3・伯「はいっ!!」



バタバタ動き始める空気…


抱き抱えた千代に触れると、ヌチャッと千代の血が腕に絡む



前「千代……」


豊「匡様…我々は小鬼を探しに行きます。」

匡「あぁ…必ず、見つけろよ。」

相「えぇ…」



相模と豊前は羽を広げて小鬼らを見つけに飛び立つ…







「匡様…!!」



匡・前「………。」



遠巻きに見学しとった民は千代を恐怖の眼差しで見つめ



「その娘は危険です…」

「今のうちに始末を…」



そう叫んだ。



"悪気しかあらへんの間違い"


千代にそう言うたのはいつやったかな。
あれは


悪気がない事が悪い、の間違いやな……



"始末"て……




前「お前らっ…」


匡「前鬼。ここはいいから、お前は千代を運んでやれ。」


前「……おう。」



なぁ千代。
一人やないで?


俺も…俺らもおるから
小鬼らにも、また会わしたるから…



ようやく掴んだその自由を



離そうとしたらアカン


ーーーーー
千代side



思えば、私はいつも気づくのが遅くて


深く沈んだ私を救い出すのはいつも彼……



『ん……』



ゆっくり瞼を開けると


『っ!!?』


前「千代っ!!」

赤「千代しゃま!!」

青「千代様ぁ!!」



彼ら3人の顔が視界一杯に写った…



『赤、青…大丈夫だったの?』



身体を起こそうとすると、ゆるいダルさが襲う…



赤「まだ動いてはなりましぇん!!」

青「お怪我が…」


『…大丈夫よ。』



頭痛が酷くて、それどころじゃない…


怪我も痛まないし…
手当てが良かったのか、鬼として回復力が並外れなのか




『でも…二匹とも、生きてて良かっ……』



ぎゅうっと小鬼を抱き締める。
小さな小さなお友達…



赤「豊前しゃまに助けて頂きました!!」

青「私は…相模に……」



青はなんだか不服そうだけど…
天狗が鬼を助ける…なんて、彼らの懐の深さがわからない。


私を始末するには絶好の機会だったのに……
なんて言ったら、赤髪の彼にまた怒鳴られそうだから…
うん、言わない。



『……赤、青。スガヤ様は?』


赤・青「……。」

前「……棺に、入っとる。」


『そぅ……』



本当に、死んだ…いや。殺したのね……

あんなに恐れられていた人の最後は呆気なかったようにも思えて


なのに
明るみに出た事実は私を混乱させる……



夜叉の郷も今、混乱してるだろう……



『赤、青…郷へ向かう支度を。』


青「千代様!?」

赤「郷へ!?」



力で制圧した故に、誰にも連れられる事なく置いていかれたスガヤ様…


忠誠心なんて、皆も無かったのね……



前「何考えとんのやっ!!」


『まだ、仕事があるのよ…』



プライド高い主の最後は夜叉の郷でなければ…スガヤ様もお怒りになるだろう…



『私一人で十分よ…』


前「千代…」

赤・青「そんな……」



こんな仕事は私だけでいい。



新しい世界を掴むために、力で世界を滅ぼした…


よく考えれば、命のコントロールをしたがったスガヤ様と変わらないじゃない?


平和を求めて戦いを起こす。
こんな矛盾はない。



『留守の間、天狗の郷を助けてやって?』


赤「千代しゃま…」

青「…。」



いつもなら文句言う青も、天狗に助けられたからか抵抗はしない。


この二匹が居れば
私が帰らずとも、この地の安息は守られるはず……



『前鬼さんも…二人をしっかり見てやってね?』


前「……認められん。」


『最後の仕事くらい、誇りを持ってやりたいのよ。』


前「……ちゃんと帰るんやろな?」



あぁやっぱり
貴方は意外に鋭いのね?



『他に…どこに帰るの?』

前「……なら、えぇ。」



ちゃんと戻るわよ?
生きてさえいれば……




最後には、貴方の顔をみたい…。


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