infringe×前鬼

□ステップ
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千代side



夢をみた。



夢のような、過去の記憶……





母「妾の子をどう可愛がれっていうのっ!?」


父「いいじゃないか。力は文句のつけようがない。あの瞳の色を見ただろう?」



私の瞳は色素の薄い茶色……

ありがたい力を秘めてる証。



母「私達が喰われてしまうかもしれないじゃないっ!!」



お母さん。
私、血も肉も好きじゃないよ?


お母さんを食べたりなんかしない…



父「ちゃんと躾ればいいだろう?」



お父さん。
本当は



私が怖いんでしょ?
なら、いい子にしてるから。お父さんを食べたりしないから。

ペットみたいに躾ていいから


私を食べないで?






ス「お前は立派な夜叉になるんだ。」


おじーさま。
どうして?


どうしておじーさまはそんな姿をしてるの?

でもね

言わない。
言っちゃだめだってお父さんが言ってたもん。



どうして鬼を食べなきゃいけないの?
私、好きじゃないよ


血も肉も……


みんな怖くないの?

目玉とられて何で笑ってるんだろう?


どうして怖くないの?



楽しそうなの?



でも


だけど



誰も私に近づかない。


ありがたい力ってゆーのを持ってるから

私は危険なんだって。



ありがたい力を持ってるから、お母さんは私を食べちゃわないけど


だから一人なんだって。



ありがたい力


"ありがたい"




それは




誰に?




「千代しゃま。初めまして!!」

「遣い獣の小鬼でございます!」



突然現れた小さな小さな生き物。



遣い獣ってなぁに?



「千代しゃまの僕にございます!!」

「何なりとご命令を!」



しもべ……
命令……



いいよ。わたし、そんなのいらない。




「千代しゃまは将来八大が約束された方。」

「我々がお供いたします!」




約束?

誰とも約束してないよ?




「その瞳の持ち主、将来は決まっております!」

「おめでとうごじゃります!」




ありがたい力のおかげ?

でも私やだよ。
嬉しくないよ。


そんなの、なりたくない。


しもべもいらない!!

私鬼やだもん!



「そんな…千代様、そのような事を仰ってはなりません!」


「ならば千代しゃま。お友達になりましょう?」




お友達……?

怖くないの?


「はいっ!!」

「勿論ですっ!!」




お友達……
初めての



小さな小さな友達



「ではまずはご命名を!」



なまえ……ないの?



「勿論でし!我ら、千代しゃまだけのモノ。好きなようにお呼びくだしゃい!!」



じゃぁ……


そうだな。














『赤、青……どうしたの?』



私の前にちょこんと正座する二匹。



赤・青「……。」



そして



前「ホレ、ちゃんと言うんやろ!?」



その後ろにドッシリ胡座をかいた前鬼さん。


完全に主従関係の崩壊……



まぁ



そんなもの、私にとっては最初からどうでもよかった。



匡・八「………。」



二匹と一人の様子に、皆さんも視線を集めてる。



『……なに?どうしたの?』


昨日の夜から姿を見せないと思っていたら、朝になってこんな事になっていた……




赤「千代しゃま…昨日はすみません。」

青「九尾を放したのはスガヤ様です。」



『………。』




うん。


そうだとは分かってたけれど……



それを言葉にするには意味がある事も知ってる。





『ありがとう。けど、今のは聞かなかった事にさせて?』


赤・青「…っ!?」


前「千代?」




昨日、小鬼達が答えなかった理由。



それは、我等夜叉当主への裏切りになるから。



『小鬼。私は……九尾を殺すよ。』


匡・八「………。」




もう決めた。



『貴方たちには生きて欲しいから、今のは聞かなかった事にしてあげる。』


赤・青「……ですが!」




私の今の言葉を土産に、スガヤ様の元へ戻れば


命は助かる可能性がある……




『赤、青。貴方達を遣い獣から解放します。』


赤・青「っ!?」

前「解放て……」

匡「どうなるんだ?」



どうもならない。


次の主が出来るまで



『二匹はこれで自由の身よ?私の傍にいる必要はないの。』


赤・青「……っ」




貴方達がいたから


一人きりじゃなかった。



『困った主でごめんね?今まで、ありがとう。』



本当に


ありがとう。



『それに……』




刻一刻と戦いは近づいてきてる。


準備は早い方がいい。





『前鬼さん。貴方も遣い魔から解放します。』



前「なっ……」



貴方には最初から


私が罰を与える資格なんてなかった



罰を与える意味も、私にはわからない。




赤「駄目です…」

青「嫌ですっ!!」




大きな声で叫ぶ小鬼。



『駄目って…私が決める権利よ?』



青「ですがっ…」

赤「お友達でしっ!!」










あぁ…


そうか。



『まだ、覚えてたの?』




そんなずっと前の約束。




前「俺は別に今までと変わらんやろ?元々、道具扱いされてへんし……」



『前鬼さんまで……』



バカみたい。



『皆さんも、支配下から解放します。すぐに郷を離れた方がいい。』


匡・八「……っ」



命がほしくば



『じゃなきゃ、直ぐに鬼がきますよ?』



貴方達を守る程の力は、今の私にはないもの。






匡「俺は離れねぇぞ。天狗当主だからな。」


相「ならば我等も。」




ほんっと……



『バカじゃないの?命は大切にしなさいよ。』




私はもう、当主を裏切った身。



消える事は決まってる。



私が生きてる間、ちゃんと出来る仕事はこれくらいなのに……





前「信じたいモンを信じとるだけや。」


『………。』




スガヤ様


貴方の気持ちは今、初めてわかりました。




思い通りにいかないもどかしさ……




『……本当、理解に疎いんだから。』




温すぎるのよ。



赤・青「我等もっ!!離れませぬ!!」


前「ペットは飼い主に似るらしいからなぁ?」



……どういう意味よ。




もどかしくて

もどかしくて




だけど



私にとっては潰さずに夢をみたい世界なんです。




『本当……嫌になるなぁ。』



スガヤ様が勝つゲームなら



彼等は消えてしまうんでしょう?



賭けるには




大きすぎる賞金



ならば私は



『しっかり、守らなくちゃね……』



限りある命でも




私はようやく、自分を手に入れたんだから……


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