ハラカラ

□焦燥
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「希君はどうしたの」




多分、震えてはいないはずだ、大丈夫。

今私の目の前にいるのは、メローネ、だから、大丈夫だ、大丈夫。
いや、言い聞かせなきゃならない状態自体まずい。

だって、寧ろ他の知らない野郎だったらこんなに……怖く、ない。


「……俺だって、必死なんだぜ?わかるだろ?」
「必死だね、………ねぇ、何か知ってるんでしょう」
「なぁ咲、あんたもそろそろ学習しろよ」


私は、最近様子のおかしいメローネが気になって、つけるとでもなく追いかけてみたんだ。

隠れる気もなく、当然すぐにメローネに見つかって。
それはいい、いいんだけどあんまりに、おかしい。

異常だ、メローネのこの反応は、なにか、



「何をしている」



私の首を掴んでいたメローネの手が、一寸軋んだような、気がした。
視線だけ動かして声の方を見れば、リゾット。

メローネはちょっとだけ、笑って。



「冗談さ、殺る気なら体ごと持ち上げてる」
「その手を離せ」
「ハイハイ、リーダー」


にやにや、笑いやがって。
前はこんな笑い、あんまり見せなかったのに。
最近、希君がいなくなってからだ。

彼がこんなになったのは。
だからそのせいなんだって…でも、何かが、引っ掛かるというか。
私の中の何かが、


「リゾット、」
「……」
「…リゾット、希君は」
「………咲」
「ね…メローネ、最近おかしいよ、前はもっと…綺麗に笑ってたし、」
「…………咲」



大丈夫だ、って。

リゾットも、あぁいつか見たことがあるような光を瞳に浮かべて。
優しく笑ったけど。

駄目だ、何かが、おかしいんだ、何か、見落として、



「さあ、帰ろう…お前は何も心配することはない」
「………!?」
「じゃあ、リゾット、俺は行くよ」
「ああ、……咲?」


リゾットの声も無視して、私は走った。
メローネと、リゾットから逃げるように、走った。

駄目だ、あいつらは。

あぁ割り切りの上手い大人どもも宛にするまいよ。
ペッシも駄目だ、となるともう一人しかいない、というか最初から私は彼を目指していた訳で。


「、ギアッチョ…ッ!!」
「うおっ!?……咲?」


彼の部屋にダイブして、その当人を押し倒すように抱きつく。
流石に鍛えてるから寸で踏みとどまったけど、怒った顔で大口を開いたギアッチョにそれでも私はいい募る…彼が音すら発する前に。


「希君を、探して!」
「アァ!?何を今更、だから探してんだろォよ!?」

「違うの、急いで!!」



嫌な予感。
私のそれはあまり有り難くないことに中々の的中率を誇る。



むしろ百発百中。



だから、私は焦っていた。
理由もわからないまま。
いや、ひょっとしたらわかっていたけど、認めたくなかっただけなのかもしれない、けど。

ちょっと、自分でもどうかっていう程取り乱した自分が酷く滑稽で、今度は笑えてきて、

いよいよギアッチョにどやされて、私はやりばのない感情を無理矢理に飲み下した。






END.

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