純白の魔女

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「であるからして温度が一定なら体積は圧力に反比例する。
また圧力を一定とするならば体積は温度に比例する。
これをボイルシャルルの法則と言う。
公式としてはDV=NRT……」


先生の話を適当に聞き流しながら黒板に書かれた授業内容をさらさらとノートに書き写していく。
神威大門の授業内容はかなり難しいので聞いているだけで眠くなってしまう。


「こうしてくっつけるだろ」


授業中に聞こえてきたアラタの独り言。
アラタはシャッシャッと字を書く時とは違った鉛筆の走らせ方をしている。
これは……


「(ああ、落書きをしているな)」


アラタのノートをチラリと遠目から除くと案の定ど真ん中に書かれた落書き。
ぶつぶつと独り言を言いながら先生の目を気にせず落書きをするのはアラタらしいか。


「じゃあ次の法則を瀬名君読んでみて」


アラタは指名されたのに気付かずノートに落書きを書き続ける。
痺れを切らした先生が再び「瀬名君」と呼ぶと後ろの席のサクヤがアラタの肩をつつく。
サクヤのお陰で指名されたことに気付くと落書きをする手を止めて先生の方を見た。


「次の法則を読んで」

「は、はい!」


アラタは慌てて席を立ち上がり教科書をパラパラとめくる。


「えーとえーと、ヒカル」


隣の席のヒカルに助けを求めるが聞こえないふりをしているのか無視される。
見かねたサクヤがページを教えるとアラタはそのページをパラパラと開いた。


「ここか、Yes, we can!」



静まり返る教室。
授業内容を聞いていないどころか教科書すら出していなかったのか。


「瀬名君今何の授業かね」


先生はワナワナとふるえながら言う。


「え? あれーー!?」


やっとアラタは教科が違うことに気付き驚く。サクヤは頭を抱えヒカルは笑っているのか顔を隠している。


「ぶっ、くく……」


リョウに至っては笑いをこらえ切れておらず口元を抑えながら笑っていた。
その後の授業もアラタは毎時間授業そっちのけで武器のアイデアをノートに書き続けていた。




「毎時間一体何を書いているのだ」


授業の間の休憩時間。
私は食べ終えたプリンのカップを捨てに行くついでにアラタの席の前に立ち寄ってノートを覗きながらアラタに問いかける。
ちなみにプリンは授業の合間の休み時間に最低でも必ず1個は食べている。
その為私の席からゴミ箱への往復は最早恒例なのだ。


「ツララか。何ってドットフェイサーの為の武器だよ。バイオレッドデビルに太刀打ち出来る様なやつ考えてるんだ!」

「ふむ、成程。しかしこれだと理屈がなっていないしどう見ても機体が持ち運べるだけの重量を超えてしまっているからこれの実用化は無理だと思うぞ」

「そっか。う〜〜ん……。難しいな」


アラタが次のページにまた新しいアイデアを書き出し始めると次の予鈴がもうすぐ鳴ってしまうので私は席に戻る。


当然ながら次の時間もアラタはろくに授業も聞かずに武器の考案をしていた。
まあ、私も授業はあまり聞いていないので人に言える事ではないが。
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