純白の魔女
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標的確認。
現在、廊下の角を右に曲がり階段の方へ進行中。
私は曲がり角を曲がった為視界から消えた標的を追い、近すぎてバレないように進行していきながら尾行を続ける。
じりじりと曲がり角付近の壁にぴたりと体をくっつけて行き、ひょっこりと顔を覗かせる。
「……あれ?」
私は見失った標的をキョロキョロと辺りを見回しながら廊下を進んでいく。
階段前に行っても標的の姿はない。
おかしいな、階段方向へ進行して行ったと思うのだが。
しかも、招集された部屋はその階段を上った先にあるのだ。
つまりこの階段を上らねば行けない筈なのだが。
歩き方の速度と古い木造建築の階段を上る音がしなかった事からして階段を既に上っているとは考えにくい。
「おい」
「ぬおっ!」
突然私の背後から尾行の対象である標的の声がして驚きのあまり変な声を上げてしまった。
標的もといハルキは私の気配を察していたのか一度姿を眩ませて見失った所で背後から声をかけてきたのだ。
全く、意外と茶目っ気のある奴だ。
「さっきかから尾行なんてして一体何のつもりなんだ」
「び、尾行なんてしていない! べ、別に女子に人気のテレビドラマ少女スパイ]に憧れたからとかそういうわけではないぞ!」
ハルキは若干呆れながら尾行をしていた私に聞くと私はふいっとそっぽを向きながらハルキに答えた。
それから2人で並んで歩き、小隊長会議の行われる部屋の前に着くと使用中と札が立てかけられたドアを開ける。
「主役が来たね」
ハルキと私はドアを閉めて各々空いている席に座る。
私達以外既に全員隊長達が集まっていて小隊長会議が始まる。
「日曜のこんな早朝に、何故小隊長会議を」
「お前が一番分かっているはずだ」
私は席に座ると持参していたひざ掛けを膝に敷いた。
ヒヨコ柄がプリントされた神威島に来る前からの愛用のひざ掛けだ。
「それはアラタ達の事か?」
「ええ、皆で話し合う必要があると思いましてね」
リクヤは私の質問に答えながら眼鏡のレンズを拭くと再び眼鏡を装着した。
「あの二人、肝心な所で命令を聞かなくなるよね。それともまた君のせい?」
意地悪く言うカイトの言葉にハルキは否定せず俯ける。
「あら、図星?」
「言い訳はしない」
カイトに続けてキャサリンもハルキを問い詰める。
だがハルキは潔く二人の言葉を受け入れた。
「命令を聞かなくなるも何も二人が転校してきて間もないのだ。
まだ右も左も分からぬ新人を袋叩きに責めるのはどうかと思うぞ」
「君だって他人事じゃないさ。君はあの時自分の拠点を放棄してまで……」
「もう止せ。カイト」
ゲンドウはカイトを制してこの話題を途中で止めさせるとカイトは顔を歪め嫌そうな顔をするも黙る。
「明日のミッション第1小隊と第6小隊は出撃できるのか」
「LBXについてはサクヤが全力で修理している」
「博士が既に修理完了している。外傷ほど酷くは無かったそうだ。
他の2人のLBXは武器さえ修理をすれば問題はないしな」
ゲンドウの質問にハルキと私が続いて答える。
ハルキの機体は何とか私が庇ったので無傷で済んだ。
しかし援護に来る前にダメージを負っていた二人の機体は明日のウォータイムに参加できるのだろうか。
「LOST寸前だったんでしょ? 直るの?」
「それは……」
キャサリンの質問にハルキは言葉がつまる。
「弾除けくらいにはなるかな」
「とにかく第1小隊に攻撃が集中するのは間違いありませんね」
次々とハルキに言われる各小隊長達の嫌味に聞いている私のほうが苛立ちがこみ上げてくる。
同じ仮想国である以上仲間である筈なのにどうしてその様なことが言えるのだ。
しかしここで私が何か言ったとしても不利になるのはハルキだ。
「……っ」
歯痒いながらも私は開きかけた口を閉じる。
「ハルキ」
ゲンドウがハルキを呼ぶと俯いていた顔をゲンドウの方へと向ける。
「無策で臨めばまた仲間を失うだけだ」
「分かっている」
ゲンドウがハルキに説くとハルキは短く答えた。