純白の魔女

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「……ツララ。ツララってば……」

 ユサユサと気持ちよく寝ていた私の肩を揺するのはルームメイトであり私の受け持つ仮想国、ジェノック第7小隊のプレイヤー出雲ハルトである。
 彼女は2年5組のクラス委員長兼第1小隊隊長出雲ハルキの双子の姉でもあるのだ。
 弟のハルキとは容姿は似ている。性格の方は生真面目なハルキとは違い幾分かは砕けた性格だと思う。

「ん……もう朝なのか……」

 寝起きで未だに半分眠っている目をこすると気だるい体を起こしてベッドから立ち上がる。
 ベッドの近くに置かれた目覚まし時計を確認すると時計の針は6時30分を指していた。
 ハルトは既に髪型や身なりを整えていて食堂に行く準備を済ませていた。

「ねむ……」

「ほらほら、席が埋まっちゃう。早く」

 私はハルトに促されるままに起きたばかりの眠気眼を数回擦る。
 彼女はいつも起きるまでしつこく起こそうとするから2度寝をしようにも出来ない。
 朝は低血圧なのだから仕方のないこと、と開き直っているのだが彼女にその理屈は通用しないようだ。
 だから改善しようとしない私を彼女は厳しくしかるのである。
 こういう所は弟とそっくりだと思いつつ顔を洗い、寝ぐせだらけのボサボサな髪を梳かす。
 しばらくして朝の支度を終えた私は待たせていたハルトと一緒に女子寮を出た。
 食堂に行くと、既に席をキープしていたのは第7小隊のプレイヤーである神崎リョウと同じく第7小隊のメカニックである博多ミドリ。
 リョウとは物心付いた時から一緒にいる所謂腐れ縁。リョウと私は北海道出身なのだがリョウの実家は地元では結構名の知れた料亭が実家である。
 ミドリは大の発明好きで今までに数多くその結果を残してきたことと苗字の『博多』からもじって『博士』と私は呼んでいる。
 ちなみに彼の発明は成功ばかりではなくむしろ失敗の方が多い。
 それでもメカニックの腕は確かであるしこれまでに彼の発明に助けられたこともあるので『博士』と呼ぶに有り余る程尊敬している。

「遅い。俺達が来なきゃもう満席だったぞ」

「今日は随分と遅かったね。あ、今日も≠ゥ」

 リョウはもぐもぐむしゃむしゃと今朝の朝食メニューである食パンにジャムを付けて口に頬張りながら言う。
 毒舌な博士は一度言ったのをわざと言い直すとわざとらしくも≠強調させた。

「別に遅刻した訳でもあるまいし良かろう」 

 ムッとしながら言うとトレーをテーブルに置き空いている方に座りパクッと食パンを口に頬張る。
 ……何か足りない様な。
 そんなことを考えながら食パンを食べ進めていく。

「ジャムの存在忘れてるだろ」

 食パンを4分の3程度食べ終えた後にリョウは私のトレーから取って私に見せつけた。
 あろうことか私の視界に丁度食器で隠されていたジャムに気付かず食べ進めていたのだ。

「あ……」

 気付いた時は遅かった。
 だが、このまま使わないのも勿体ないので最後の4分の1の食パンにたっぷりとジャムを付けて食べることにした。
 全員が食べ終え学校に行く支度をして今は担任の美都先生が来るまで教室内で待機。
 HRが始まる頃に美都先生がガラリとドアを開け入ってくると私服を着た転入生と思われる二人が続いて教室に入ってきた。

「全員注目。今日からこのクラスに入る転入生の瀬名アラタと星原ヒカルよ。じゃ、二人共席について」

 美都先生は転入生二人に席に着く様に言うと持っていた冊子を教卓で整える。
 二人は言われた通りの空いている席に着く。
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