□プロローグ
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 この世の世界とは思えない程美しく、そしてどこか儚さを感じるような“空間”だった。“空間”というよりも“時間”にいるような気さえする。そこには壁もなく、天井もなく、床もない。あるのは、ただ、何色もの美しい色だけだ。まるで筆につけた絵の具を水で洗った時に見れるような淡い色。夢の中の世界のようだった。
 そんな空間に五人の少女がいた。その少女達はそれはそれは美しかった。

「久しいな」
 黒髪の短髪の少女が言う。少女にしては大人びた口調だ。まるで何百もの時を生きたかのように。
「こうして全員が揃うのは百年ぶりね」
 海色の髪のウェーブがかった美しい長髪の少女が言う。どうやら、少女達は人間ではないらしい。しかし、見た目はどうみても十五,六歳の少女なのである。
「あれから、千年。早いものね」
 黄緑色の長髪の少女が懐かしそうに言う。
 千年。確かに少女たちはそんな年代を感じさせた。確かに、顔だけ見れば十五,六歳の少女だ。しかし、少女達の着ている服はとても現代のものとは思えなかった。着物や袴など昔を感じさせる服装。にも関わらず、その服装は色あせてなどおらず、むしろ美しく、堂々としているのだった。
「そんで?みんなこの百年間はどうだったわけ?」
 赤紙の短髪の明るく元気のありそうな少女が言う。口調からもそんな性格であることが伺える。
「事態の深刻化はお互い様でしょう?跡を継ぐ者は大変でしょうに…」
 黄色の髪のセミロングの少女が言う。それに皆、顔を合わせ、キッと真面目な顔つきになる。

「そう…。時は満ちた」

 その瞬間。少女達の体の一部が強い光を発した。
 海色の少女は額から。
 碧色の少女は胸元から。
 朱色の少女は右腕から。
 黄色の少女は左腕から。
 そして、黒色の少女は胸元、両腕、額から。
 そう、彼女たちの体の一部には宝石が埋め込まれていた。その宝石は少女達の瞳と髪と同じ色をしていた。
 この世の光とは思えない強い光を発しながら、世界の時は動き出す。

 海が、波をたて、
 緑が、歌い、
 日が、照らし、
 土が、生かし、
 全てが。輝く。





































“そう…。時は満ちた”


























































































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