短編

□恨むは情報社会!
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 現代は情報社会と言われている。インターネットの普及によりネットを開けばいつでも誰でも必要な情報を欲しい時に入手することができる。携帯電話からスマートフォンへ、機器もどんどん便利になっていく。電話やメール、LINE、今では会わずともすぐに相手に伝えたいことを伝えることができる。それは便利である反面、寂しさも感じる。

「好きです。付き合ってください」

 少女はLINEに届いたひとつのメッセージをずっと眺めていた。それは意中の人からの告白である。告白されれば勿論嬉しい。それが意中の人であれば尚更そうである。なんたって両想い。念願が叶った、ということなのだから。でも少し複雑な面もある。
 直接聞きたかった。
 同じ内容を伝えるにしても文字だけじゃなくて相手の声を、表情を見て、同じ時間を共有したかった。
 複雑な乙女心というやつであろうか。一度そのような感情を抱いてしまうとなかなか振り切れない。結局少女はその日返事をせずに眠りについてしまった。

 朝会ったら直接言ってやろう。そう思い、少女は帽子を深く被ると家を出た。まずは既読無視を謝る。それから告白の返事をするのもいい。いいけれど。それはなんだか癪だった。私は彼からの告白を直接聞けなかったというのに彼は私の告白を直接聞けるなんてそんなの不公平だ!
 学校に行くと窓側の前から15番目の席にいつも通り彼は座っていた。私は彼の席の横に行くといつも通り「おはよう」と言った。彼はいつも通り「ん」と返したけれど、いつもと違って私の方は見なかった。怒ってるのかなあ。
「あのさ、昨日のLINE…」
「ああ、あれ」
 そこでやっと彼は振り返り、そっけない顔で少し早口でこう言い放った。
「嘘だから」
 その瞬間私はまるでマシンガンで胸を何度も貫かれたような気分になった。何連発も連続で急所を抉られるような、そんな酷い、あんまりな!私は「は」とか「え」とかただただ目を丸くして唖然と情けない声を出すことしかできなかった。
「罰ゲームで、お前に告白しろって言われたから。それだけ」
「ふーーーーーーーん」
 罰ゲームって小学生かよ、お前は!しかもなあに?罰ゲームで告白する相手が私って!そんなに私に告白するのが嫌なのかよ!そんなに私は魅力がないのかよ!!!
 私は怒りで震えて、悔しくて悔しくてショックで涙が出てきた。悔しい。悔しい。悔しい!人の気持ち弄んで!!ううん、ちがう。そうじゃない。弄ばれたこともショックだけれど、何よりこんな奴に惚れちゃって、ちょっと喜んじゃった自分自身に腹が立って!悔しかった!!
「バカ!!私が、私が……!どんな気持ちで……!!!」
 私が泣いて、大声を出したせいで周りの目線が痛い。でもそんなの知るか。この怒りを、悔しさを、涙を。抑えられるわけがない…!
 彼を睨む。彼はそんな私を見てクスリと笑ってもう一度「嘘だよ」と言った。
「……は?」
「だから嘘だよ」
「なにが」
「罰ゲームで告白したっていうのが」
 彼はやっぱり満足そうに笑って、私はぽかんと口を開けていた。状況が飲み込めない。
「既読無視されたのが癪だったからさ、ちょっと意地悪しようと思って」
 そう言いながら彼は私の涙を拭う。その手はとても優しいけれど、彼の意地悪な笑みは全然優しくなんてない。
「俺のこと大好きなんだろう?」
 そう言われたのが悔しくて、奴が一枚上手なのが悔しくて、意地悪されたのが悔しくて。でも一番悔しいのは、こんな奴に惚れてしまった私自身で。
「大好きだバカ!!!!!」
 それを聞くと彼は満足そうに笑って「知ってる」と言い、やっぱり私は彼のそう言われたのが悔しくて、でも一番悔しいのは以下略。
 結局私は彼から「好き」という言葉を聞けなかった。それも悔しい。でもなんかもう、私に好きって言われて嬉しそうな奴が見えたからまあいいか、なんて。ああやっぱりこんな奴に惚れちゃったの悔しいから、LINEで返事すれば良かったかもな。というかLINEと携帯とかがなければそんな余計な事考えなければ良かったのに!恨むは情報社会!
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