09/05の日記

23:19
政宗×幸村B
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「ひとつ、」

「ん?」

「ひとつ訊いてもよろしいか?」

ぽつり、呟くように言って立ち上がった幸村は、痛むだろう背を庇いながらそれでも強気な眼差しで問いかける。

その瞳に映され、いくらか気分がよくなった事を自覚しながら頷くと、前置きは不要とばかりに手負いの天使は言葉を紡いだ。

「天界を、どうされるおつもりかお聞きしたい」

この天使は、可愛くないことばかり言う。呆れに深い溜息を吐けば、ぴくりと秀麗な眉が動いた。さぁ?どうするつもりなんだろうな俺は、茶化すとみるみるうちに血の気が上がる。分かりやすい。本当に分かりやすくていい。

「………くだらねぇ」

「くッくだらないなど!!」

「もうアッチには興味ねぇさ…今ンとこ、どうするつもりもねぇ」

今はな、と言葉を切れば幸村の表情が更に険しくなる。

「それに」

「…―――痛ッ!」

互いの吐息が掛かるほど近付いた距離、背に回した手で天使を苦しめる根源を鷲掴みギリと毟り取るような仕草を見せる。

「今は向こうの心配するより…アンタ自身の心配した方がいいぜ」

「っや、め……はっ離せ!!」

「ここ、痛ぇんだろ?どうせなら根元から引っこ抜いてやりゃあ良かったか」

そうすれば幸村の息の根を止めたも同然、だがそうしなかったのはただの気まぐれか、今となってはそんな事はどうでもいい。

「言った筈だぜ…アンタが欲しかっただけだと。もう忘れたか」

「くっ…やめ、ろ……ッ」

「俺の言ってる意味が分かんだろ?アンタはそこまで馬鹿じゃねぇ筈だ」

噛み締めて血を滴らせる口角を舐め上げれば、余程悔しいか怒りの色を燈した瞳が煌くより早く、幸村の右手が唸りを上げた。

「甘ぇッ!」

「な、にっ…!!」

燃え上がる炎を纏った拳は空を切り、瞬時に背後に回った政宗の鋭い爪が細い首に食い込む。そのまま横腹を蹴り飛ばせば、ばしゃりと盛大な飛沫を上げて噴水の中に沈んだ。

漂う尻尾を掴み無理矢理頭を引き上げれば、痛みに引き攣った苦しげに、否、苦しみに喘ぐ幸村が赤い水を吐き出しては噎せ返り、ぼろぼろと涙を零す。

本当にイイ表情をする…ニィと吊り上った口角をそのままに、ぐっと顔を近付けた。

「ぐ、かは……ッ」

「訂正だ、俺はアンタを買い被ってたみてぇだな」

どうせなら反抗できない程に手折ってしまえばいい、そうだ、これはもう俺のものだ。好きにしてしまえばいい。欲望を抑えるなど無駄なことだ。疼いた心臓が早鐘を打ち、目の前に伏している獲物を噛み殺してしまえと政宗を急かしている。

あまくて、おいしい獲物。
ずっとずっと欲しかった。

「俺に抗うのが無駄だって事…今直ぐ確かめてみるか?
―――もちろん拒否権はねぇ」

「っひ、―――――ッ!!」

背筋がざわめき漆黒の翼がその姿を変えたとき、恐怖に戦慄いた唇が声にならない声を上げる。もっと…もっとだ幸村。渇ききった俺の欲望を満たしてくれ。



つづく

 

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