学園祭-前半-(20)
□佐助×幸村
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「…それちゃんと出来たら、おやつ食べよう」
「う、うむっ…えと、うんと…」
おやつの誘惑に耐えられるくらいになったのだから、成長したと言うべきか。だがその代わりに、物欲しそうな顔で佐助を見るようになってしまったのだから堪らない。あちらはあちらで、色々と溜まっているものがあるのだろう。それが何かだなんてとうに分かり切っているけれど、我慢我慢。
俺様が狼になっちゃってどうすんの。そう自分に言い聞かせてきたけれど、十日後の試験さえ合格すれば晴れて自由の身になるのだ。
(そしたら、たっぷりとね…)
可愛がってあげちゃうから頑張ってよ。でも落ちたら落ちたで、お仕置きかなぁなんてとんでもない事を考えている佐助を余所に、幸村は真面目に鉛筆を走らせていた。
それから、2週間が過ぎた。
受験の日、佐助は学校が休みだった。道に迷ったらいけないだろうと朝早くから迎えに行って、学校まで送り届けてやった。その後は用事があったから待ってやってあげられなかったけれど、試験の方の手応えはなかなかにとメールが届いた時、まだ油断しちゃいけないよと返信した。合格発表の日まで何が起こるか判らない。だからこそ人は神頼みする。実は幸村に黙って神社にお参りしたのは秘密だ。
雪舞い降りる今夜、合格発表の前日。幸村は佐助の家に泊まりに来ていた。寒い寒い、ふたり身を寄せ合ってこたつに入る。何も別々の所から入ればいいものを、並んで入るのだからバカップルと呼ばれたって文句なんか言えないだろう。佐助はコーヒーを、幸村はホットミルクを飲みながら、当たり障りのないテレビ番組を見ていた。
「あ、あの…っ、さ、さすけ」
「なぁに…どうしたの」
「肩、借りてもよいか…?」
「どうぞ?」
言えば、ぴったりと幸村がくっつく。佐助の右腕に、自分の腕を絡ませて。
ははぁ、これは相当に限界と見える。けれども、合格するまでは"しない"と佐助は心に決めていた。明日になれば結果も分かる。いつの間にこんな破廉恥な子に育ってしまったか知らない(いや、自首すると自分が悪い)けれど、こうも積極的に迫ってくるなんて。
「明日、一緒に見に行こうか」
「う……うん………佐助のけち」
「何か言った?」
だが、襲ってなどやるものか。今はただ耐えるのみ。檻の鍵は、まだ掛けられたままなのだから。