学園祭-前半-(20)

□元親×幸村
3ページ/6ページ





「痛ェな!離せよっ」

「俺たちの邪魔すんじゃねぇ。幸村、お前からも何か言ってやれ」

「政宗殿の破廉恥!変態!!」

「…ッの、犯されてェのか!」

生徒がわんさか集まる学食で、変態と罵られれば引き下がらずをえなかったようだ。

ちくしょう、後で覚えてろと悪者ばりの捨て台詞を呟くと、さっさとどこかへ消えてしまう。"後で"何が起こるか分からないから、元親を慕っている後輩達に監視を頼もう。まさか幸村が危ないからとは言えないので、その辺は適当な理由を付けて。

「…さて、と。じゃあ食うか」

「ちか兄、いっぱい食べるのでござるな?」

「これはお前と一緒に食う分だ」

小鉢を数個差し出すと、わぁ、こんなにたくさん!と喜んでくれる。弁当とは違って少しばかり温かいものだから、毎日冷えたものばかり食べている幸村にとっては珍しいものだろう。そろっていただきますと手を合わせて、幸村はやはり子供っぽい弁当を食べ始める。両頬にたくさん詰め込みながら。

「今日は部活あんのか?」

「んー?むむ」

「そうか。頑張れよ」

こくこくと頷いたので部活があるとは分かったけれど、本当に、これはどうしてくれようかと思ってしまうくらい可愛い。顔だけじゃない、中身まで可愛いものしか詰まっていなかった。

昼は一緒に食べてもいいかと幸村から誘っておきながら、当の本人からの会話は特にない。ただ、食べて飲んでそして元親を見ているだけ。

「なんか付いてるか?俺の顔」

「い、いや…何も。いつも通りでござる」

「いつも通りって、どんなんだよ…」

意味分かんねぇ。ぐりぐりと額を小突いてやると、いやいや首を振って逃げた。ついでに口の端についていた米粒を取って、自分の口の中に放り込む。すると、みるみるうちに幸村の顔が真っ赤になった。

「ちか兄っ」

「お、おう。何だよ」

「子供扱いしないでくだされ!」

まずい、泣きそうだ。たまにしてやっていた事なのに、どうして今日は許してくれないのだろう。

「…なにか、あったのか幸村」

それとも俺が、何か悪いことでもしたか?そう訊ねても首を振るばかりで答えなど出てきやしない。なんだか、幸村との距離が一気に離れてしまった気がした。幼馴染だからと、その地位に甘えていたのは俺のほうかもしれない。幸村ももう15、子供扱いされるのは嫌だったんだろう。悪い、もうしねぇからと言うと、少しの間の後違うでござるもんと小さな呟きが返ってきた。

(違う?何が??
余計意味分かんねぇし…)

だがこれ以上詮索したら本気で泣いてしまいそうだったから、2人無言で食べ続け、昼休みが終わる十分前には各教室へと戻った。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ