学園祭-前半-(20)

□瀬戸内×幸村
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「デザートは要るんだろ?」

「う、そ…それはもしかして」

「元就から聞いたぜ。別に恥ずかしがる事ねーだろ。オレも食うしな」

これは意外だ。元就ならまだしも、外見からして男っぽい元親が甘味を好むなんて。

どこか、お勧めの甘味処はありますかと訊けば、本当に色んな店の名前が出る。中には幸村が贔屓にしているところもあったりで、あのケーキは美味い。あそこのはスポンジがもう少し…なんて、思いもしなかった話題に花が咲いた。

そうしているうちに運ばれてきたパスタはやはり絶品で、おいしい!と言えば連れてきた甲斐があったぜとにっこり笑ってくれる。よく見る男女のそれだが、今日はデートだと予め宣言されているのだから構うことはない。

当然食後のデザートも注文し、2人お互いのものを交換して食べ合った。














「…今日は、楽しかったでござる。ありがとうございました」

「ああ。お前が楽しんでくれたなら良かった」

じゃあな、また後でメールすっから。そう言って朝待ち合わせた駅前で別れた。彼は颯爽と改札を抜けて、ホームの奥に消えていく。聞いたところによると、5駅先の街に住んでいるらしい。幸村は隣町、でも元親とは反対方向だから6駅分の距離がある。今日ここを選んでくれたのも、幸村の家から近いという理由らしくてそれがとても嬉しかった。そういう細かい気遣いが出来るのだ、元親は。

〜♪〜♪♪

早速メール受信。幸村もまだ電車には乗っていないから、遠慮なく携帯を開けた。



FROM:元親先輩
件名:今日は


オレも楽しかったぜ!

話してたケーキ屋、絶対今度行こうな。アレなら元就も一緒でもいいぞ。

オレたち2人相手すんのは苦労すっかもしんねーけど、お前が答え出してくれるまでいつまでも待つから。

無理はすんな。それだけ。

じゃな!



実に彼らしい文面だった。

どうしてか、元就も元親も自分に甘い。年上の余裕というものだろうか。答えを急かすこともせず、無理をするな、一緒に居られるだけでもいいとそれ以上は欲張ったりしない。なのに、そんな彼らの優しさは幸村を苦しめるばかりだった。

(これでは…
余計選べぬではないかっ)


幸村の苦悩など知る由もなく、仰ぎ見た空にはオリオンが光り輝いていた。






end...
 
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