学園祭-前半-(20)
□政宗×幸村←佐助
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「なんだコレお前の弟?」
にしちゃ可愛すぎるよな?と肩越しに不思議そうに見詰めてくる幸村を見て、ひとり頷く。
ほら、やっぱりヤな予感が当たった。
この男は口より先に手から生まれてきたような人間だ。気に入ったものはすべて手に入れないと気が済まない様な、駄々っ子みたいなもの。こんなのに目を付けられてしまったらどんな酷い目に遭うだろう。そう思って、今までこの教室には近付けなかったのに…言い付けを破られてしまったのが誤算だった。
「佐助、どちら様だこの御方は」
「名乗るほどのもんじゃないから放っておいて。じゃあお昼食べに行こっか!」
「Wait猿飛!!俺の存在否定すんじゃねぇ!」
こうなったら完全無視、今のは無かったことにする。幸村の手を引いて、弁当を食べるときはお決まりの屋上庭園へ向かう。が、その後を政宗が付いて来ていた。
「ちょっとちょっとー。何であんたまで付いてくる訳?ストーカーじゃない」
「俺だって昼メシだっつうの」
歩く速度は緩めずに顔だけ向けて言うと、つられて振り返った幸村がじぃっと政宗を見ていた。1年と3年では校舎が違うから無理もないが、初めて見た佐助のクラスメイトに興味津々である。
その眼帯の理由を聞きたいのか、口を開きかけるものの喋っちゃダメだよと佐助に言われ、腕を引かれるままに歩き続ける。
ストーカー呼ばわりしたにもかかわらず2人の後を付いてきた政宗は、佐助たちが陣取ったベンチの近くに居座った。制服のポケットから取り出した缶コーヒーを飲みながら、その隻眼で幸村を観察している。いやーな視線に折角のお弁当タイムを邪魔されて、内心ムカムカしかし弁当を頬張る幸村の笑顔に絆されながら、佐助も自分で弁当を突付き始めた。
「あの先輩、ずっとこちらを見ておられる」
「いーのいーの気にしない」
ほら、今日の力作食べて!と玉子焼きをあーんさせると、視界の端に居る政宗が顔を逸らした。あの男、何か変なこと考えてるんじゃないだろうね。それが何か判らなくもないけれど、あんなのと同類にはなりたくない。
「どう、美味しい?」
「うまい!」
腹いせにこの従兄弟との仲の良さ、見せ付けてやろうじゃないのといつもの5割増しでイチャついて見せた。
(Shit…!あの野郎…ッ)
多分、いや間違いなくあれは態とだと飲み干したスチール缶が歪むほど握り締めた。こちらはこちらで、あの人の良さそうな顔して実は腹黒いところを隠し持っている佐助が大嫌い。
元々仲のいいクラスメイトではなかったけど、やっぱりアイツとは気が合いそうにねェ…
どちらも同じ事を思っているなら関わり合いにならなければいいだけの話。
だがそう割り切れない二人もまだ、子供だという事だ。