学園祭-前半-(20)

□慶次×幸村
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「俺は寂しかったもん」

幸は?と一回り小さい身体を抱き締めながら、今度は真剣な顔で問う。

へらへらっとした顔をしている慶次の、こういう真面目な顔は心を揺さぶるものがある。男らしい輪郭、すっと通った鼻筋。まだ少しやんちゃっぽいところを残した瞳が、まっすぐに幸村を見詰めていた。

「さ、寂しかった…」

「でしょー?やっぱり捕獲して正解。うさぎさんは寂しいと死んじゃうんだよ?幸ちゃん」

「ずいぶん大きなうさぎでござるな…」

「いやいや。俺じゃなくて」

幸ちゃんの事に決まってるでしょ!とぎゅうぎゅうに抱き締められる。苦しいのと、やっと触れられて嬉しいのとでごちゃまぜになっていた。

そっと幸村の方からも背に腕を回して抱き締める。こんなに彼の身体は逞しいものだっただろうか?久しぶりすぎてよく分からない。そんなの今はどうでもいいかと投げ捨てて、幸ちゃん好き好きと煩い慶次を見上げた。

「幸ちゃんの制服姿、可愛くてホント堪んない」

「な!そんな目で見てたのでござるかッ」

あの熱視線はそんな意味もあったのか!と舞い上がった気持ちが急降下する。家に居ようと学校に居ようと、慶次流なのは変わらないようだった。

幸村の髪から漂うシャンプーの香りを嗅ぎながら、腰を抱くのとは逆の手が丸い頬をなぞる。だんだんと慶次の目が欲に染まっていくのを見て、今はダメと幸村は首を振った。

「俺、2週間も我慢したじゃない。偉いでしょ?」

「ン…だぁっ、て…誰か来たら」

「でも…寂しかったんでしょ?
ずっと構ってあげらんなくてゴメンね」

ちょうど慶次の口元にある額にキスを落とす。擽ったそうに身を捩る幸村は、口では跳ね除けるものの嫌ではなかった。

触れ合うのも、こんな会話を交わすのも何日ぶりなんだろう。そう思うともっともっと触れて欲しくて、自分からくいっと唇を差し出す。欲しいものはすぐ降ってきた。

 
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