学園祭-前半-(20)

□佐助×幸村
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「…んもう。旦那のケチ」

「ケチとは何事かっ!ああああのような破廉恥な振る舞いを帰ってきて早々云々…」

幸村のお説教は滔々と続く。が、それを単なる照れ隠しだとしか思っていない佐助には屁でもない出来事だった。

そもそも幸村が怒る時というのはお子様の癇癪そのものであり、威厳も何もあったものではないのだ。

腹が膨れて一応は鎮まったお怒りをさらに引っ込めていただくべく、食後のお茶にと温かいココアを淹れる。いつもは二人並んで座るはずのソファにVIP座りした幸村が、ふん、と鼻を鳴らしてカップを受け取った。

「ねぇ旦那。俺も座らせて?」

「佐助なんて床で充分でござる」

「そういう可愛くない事言っちゃう?」

お姫様のご機嫌は直らないようだから、仕方なくソファの手凭れに腰掛けた。その佐助の腰のあたりを、幸村の長い足がちょこちょこと蹴りつけてくる。

ココア零すから止めなよと言ってみるものの、今の幸村に何を言ったって聞いてくれそうにない。おれの身体だけが目的だったのでござるか?なんて佐助が見ていたドラマの台詞を引っ張り出してきた。佐助がドラマを見ているときは興味ないからと携帯ゲーム機で遊んでいたのに、音声だけはしかとキャッチしていたようだ。まったく余計な事だけ覚えてくれる。

「そんな訳ないじゃん…旦那の事、ぜーんぶ好きだよ?」

「む、うむぅ……」

意味深な目で幸村を見下ろせば、気まずいのか照れているのか目を逸らしながらカップの中身を啜った。こうなれば佐助の勝ちである。口達者な佐助と言い争ったところで勝てた例がなく、幸村ははぁ…と溜め息を吐くと正しくソファに座り直した。

「ありがと、旦那」

それをお許しだと心得ている佐助は、いつも通りに幸村の右隣に座る。思春期ついでに反抗期まできているのか、ここ最近の幸村の扱いには少々注意が必要だった。

(ねぇ、だってこんなに可愛いんだもん。心配しちゃうじゃん?)

下手に怒らせて家を出られたら堪らない。ここを出れば、幸村を取り巻くあのフリーキーなクラスメイト共に何をされるか判ったもんじゃないだろう。いや、もしくはこの妙なところで鈍感な性格につけこんで、おさわりのひとつやふたつ位されているかもしれない。普段から自分とのスキンシップが多い所為で、貞操観念が薄れても困る。

 
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