学園祭-前半-(20)

□元就×幸村
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「ひょっとして、また喧嘩でござるか」

「何度言ったって聞きやしねぇ…まったく最近の子供は」

「申し訳ございませぬ。おれが至らないばかりに…」

広い背中の後ろを小さくなりながら廊下を歩いていく。目指すは年中クラスのばさら組。その名にあやかってか結構な変わり者が集うところだ。


「やーいちびなりのばーか」

「うるさい!ちびというほうがちびなのだ、このばかちか!」

「あ、こら!!」

その教室の一角で、クラスいち小さい園児、元就とクラスいち大きい園児の元親が言い合いをしていた。この2人、家も隣同士であれば通う幼稚園も一緒なのにとても仲が悪い。せいりてきにむり、と小さいのに賢さだけは一級品の元就はそうズバリと言い切った。その賢さのお陰で、世話をする方の幸村は大変苦労している。

「お、ござるがきたぞ、ござる」

「誰がござるでござるか!もう、喧嘩はやめるでござるよ!!」

「ござるって3かいもいったぜ!こいつもばかだ!ばーか!」

そう囃し立てるのは政宗、このクラスで一番手に負えない子供だ。態度もでかければ叩く口もでかい。しかしお勉強の時間もかけっこもクラスで一番。ゆえに他の園児からは一目置かれているところもある。

「ばかっていうほうがばかだよ政宗」

「るっせぇ猿!おまえはだまってろ!!」

まさに犬猿の仲、政宗がライバル視する年の割りに妙に落ち着いた園児、佐助。多分このクラスで一番まともなのがこの子だろう。

「元就くん、元親くん。なんで喧嘩したのでござるか」

「幸村、われのことは元就とよべといっただろう。くんなどいらぬわ」

「いや、あの…そうじゃなくて」

「真田、後は頼めるか」

「あ、はい!お手数お掛け致しました!!」

さすがに担任でもないから、ここに長く居座る訳にもいかないと片倉は教室を出て行った。あの強面に不慣れな園児が若干おびえている。が、幸村を囲むようにして立つ4人の園児はそんなのお構いなし。

床に正座した幸村の膝を、我先に奪おうと取り合いになっている。

 
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