学園祭-前半-(20)

□佐助×幸村
4ページ/8ページ





「ねぇねぇ真田センセ」

「なんだ、佐助」

「センセーって彼氏居る?」

「はっ!!?」

テキパキと机の中に物を詰め込んでいた幸村が、背後で作業をしている佐助を振り返る。

「お、俺は男だっ!
見て分からんのかお前はっ」

(あらら、顔真っ赤にしちゃって…どこまで俺様を本気にするつもり?)

茹で上がったばかりの蛸のように湯気まで立たせてしまいそうな、そんな顔で睨まれても怖くない。ホント童顔だねって言ったらもっと怒るだろうか。

「居るの居ないの、答えて」

「居るか馬鹿者!!」

「じゃあ彼女は?」

「かの…?
はっ…破廉恥である―――!!」

握った拳に精一杯の力を込めて、幸村は腹の底から叫んだ。間近でそれを聞いてしまった佐助はキーンと耳鳴りがするのを堪え、大噴火した教師を見上げた。

(センセーってまさか…)

そのまさか。


Yes,I'm cherry!!


とバラしているのも同然。

さすがに25だと聞けば、そのくらいの経験はあるだろうと思っていたのだが。どうやらそれは憶測に過ぎなかったようだ。

彼氏の方が可愛い顔してる、なんて思われるのがイヤで言い寄る女が居なかったか。たまたま機会が無かっただけか…そういう事に興味が無いのか。

「した事無いんだねぇ…」

「どうしてそういう話になるっ」

へーはーふーんとニヤけた笑みで立ち上がると、今度は幸村が佐助を見上げる番になる。

佐助好みの愛らしい顔、細い身体つき。加えて未熟の果実とくれば黙っちゃいられない。教師相手に、というスリルもより興奮を煽る。

「…興味が無いわけじゃないんでしょ?」

「きょ、興味!?ッ佐助!先生をからかうのもいい加減にしろっ!!」

ガッと掴まれた胸元を見、それでも佐助は余裕の笑みを浮かべる。細い手首を掴み、力ずくでこちらへ引き寄せた。

バランスを崩し倒れる身体を抱き込んで、じぃ…と穴が開くほどその童顔を堪能する。ぱちくりぱちくり、瞬きする度に揺れる長い睫毛。赤くなった頬と、それ以上に赤い唇。少し薄めのそれは手入れなんてしていないのか、少し乾燥しているようだった。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ